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心因性EDでは、「薬を使えば十分なのか」「認知行動療法や性に関する心理療法を組み合わせる意味があるのか」が気になるところです。今回取り上げるのは、18〜38歳の男性をシルデナフィル、認知行動性療法、両者の併用、プラセボの4群に分け、12週間治療した無作為化比較試験です。[1]
結論を先に言うと、この試験では認知行動性療法群と併用群のIIEF-5スコアがプラセボ群より改善しました。一方、併用群が認知行動性療法単独群より優れていたとは示されず、割付方法、盲検化、対象者の選び方、脱落者を除いた解析など、結果を強く一般化できない限界があります。
したがって、この研究は「心因性EDなら薬より心理療法が必ず効く」「薬と心理療法を併用すれば治る」と証明したものではありません。若い男性の心因性EDで、身体面の評価と薬の安全確認を行ったうえで、認知行動療法を治療選択肢として検討する根拠の一つです。
この記事は特定の治療を勧めるものではありません。EDには血管、神経、内分泌、薬剤、心理、関係性など複数の要因があり、混合していることもあります。急な発症、胸痛・息切れ、性欲低下、陰茎の痛みや変形、持病・服用薬がある場合は自己診断せず医療機関へ相談してください。
取り上げる論文
主対象はBilalとAbbasiによる「Randomized Placebo Controlled Trial of Sildenafil Citrate, Cognitive Behavior Sex Therapy and Integrated Treatment in Men Diagnosed With Non Organic Erectile Dysfunction」です。Sexual Medicine誌の2022年10巻1号に掲載され、全文が公開されています。[1]
- 研究デザイン:4群の無作為化比較試験
- 実施国:パキスタン
- 登録期間:2018年8月〜2019年9月
- 登録番号:NCT04126252[2]
- 対象:18〜38歳の非器質性ED男性137人
- 解析対象:治療を完了した116人
- 介入期間:12週間
- 追跡:治療終了12週間後まで
- 主な評価:IIEF-5、DASS-21の抑うつ・不安
- DOI:10.1016/j.esxm.2021.100464
- PMID:34922302
- PMCID:PMC8847802
この研究が答えようとした疑問
研究者が比べたのは、シルデナフィル50mgの頓用、認知行動性療法、両者の併用、プラセボです。ここでいう認知行動性療法は、一般的な認知行動療法に性教育、性的状況に関する考え方の見直し、コミュニケーション、行動課題などを組み合わせた「cognitive behavior sex therapy(CBST)」です。[1]
研究の中心的な疑問は、若年男性の非器質性EDに対し、薬だけでなくCBSTを用いることで、勃起機能と抑うつ・不安が改善するかという点でした。
既存の心因性EDの見分け方と治療では、朝立ち・自慰・性交時の違い、身体要因との混合、受診の流れを広く解説しています。本稿はそれとは役割を分け、このRCTの設計と数値を中心に検証します。
非器質性EDは「身体に原因がない」と確定したEDではない
論文は対象をnon-organic erectile dysfunction、つまり非器質性EDと表現しています。一般には心理的・状況的要因が中心と考えられるEDを指しますが、「検査で身体疾患を完全に否定できた」という意味とは限りません。
実際、この研究は詳細な医学的検査で器質性要因を除外した方法を報告していないことを限界として認めています。若く、既知の内科・精神・ホルモン疾患がなく、肥満ではなく、降圧薬や心臓薬を使用していない男性を対象にしましたが、血糖、脂質、テストステロン、陰茎血流などを全員にどう評価したかは十分に示されていません。[1]
朝立ちがある、自慰では勃起できる、特定の相手・場面だけ難しいといった特徴は心因性を考える手掛かりですが、診断そのものではありません。EDの背景を整理する手順は初診・検査ガイドも参照してください。
研究の対象者
性機能クリニックから紹介された164人のうち、137人が適格として登録されました。年齢は18〜38歳、全群の平均は27歳です。EDの期間は6か月から3年超まで含まれました。[1]
主な参加条件は次のとおりです。
- 18〜39歳
- 少なくとも6か月、異性愛関係にある
- 既知の内科疾患、精神疾患、ホルモン疾患がない
- 娯楽目的を含む薬物使用がない
- 肥満ではない
- 高血圧薬・心臓薬を使用していない
40歳以上、非異性愛者、持病や服用薬のある人などは除外されました。そのため、この研究結果は中高年、糖尿病・高血圧・心血管疾患のある人、性的指向や関係形態の異なる人へそのまま当てはめられません。
4つの治療群
137人は登録順に4群へ順次割り付けられました。
| 群 | 登録時 | 完了・解析 | 12週間の内容 |
|---|---|---|---|
| シルデナフィル | 35人 | 28人 | 50mgを性行為の約1時間前に頓用 |
| CBST | 34人 | 30人 | 1回50分、週2回のCBSTとホームワーク |
| 併用 | 35人 | 29人 | シルデナフィル50mg頓用+週2回CBST |
| プラセボ | 33人 | 29人 | 性行為の約1時間前にプラセボを頓用 |
シルデナフィル群とプラセボ群は単盲検とされていますが、CBSTを受けるかどうかは参加者にも治療者にも分かります。さらに、ランダム化はコンピューターで作成した隠蔽割付ではなく、登録順に交互に割り付ける「sequential randomization」と説明されています。次の割付を予測できる余地があり、厳密な無作為化としてはバイアスの懸念が残ります。[1]
評価指標はIIEF-5
主要な勃起機能評価にはIIEF-5が使われました。IIEF-5は5項目、合計5〜25点で、点数が高いほど勃起機能が良いと解釈します。研究ではウルドゥー語版が用いられました。
抑うつと不安にはDASS-21が使われました。DASS-21は症状の程度を測る質問票で、精神疾患の診断を単独で確定するものではありません。
IIEF-5は臨床で広く使われる一方、本人報告に基づく尺度です。治療内容を知っている参加者では期待の影響を受ける可能性があります。また、この研究は性交成功率、パートナーの評価、治療後に「EDではない範囲」へ到達した割合などを主要結果として示していません。
結果1:IIEF-5の平均値
各群のIIEF-5平均値は次のように推移しました。[1]
| 群 | 治療前 | 12週後 | さらに12週後 | 治療前から12週後の単純差 |
|---|---|---|---|---|
| シルデナフィル | 12.25 | 16.53 | 16.35 | +4.28 |
| CBST | 13.40 | 16.70 | 16.70 | +3.30 |
| 併用 | 13.68 | 17.03 | 17.20 | +3.35 |
| プラセボ | 13.75 | 13.86 | 13.37 | +0.11 |
この表の単純差だけを見ると3つの実治療群はいずれも改善しています。ただし、治療前の平均値が群ごとに異なるため、群間比較は調整解析と95%信頼区間で見る必要があります。
結果2:プラセボとの差と95%信頼区間
年齢とED期間を共変量として調整した群間比較では、全測定時点を通じたIIEF-5の平均差は次のように報告されました。[1]
| 比較 | 調整平均差 | 95%信頼区間 | P値 | 解釈 |
|---|---|---|---|---|
| シルデナフィル vs プラセボ | 1.65点 | -0.07〜3.38 | 0.06 | 統計学的有意差なし |
| CBST vs プラセボ | 1.99点 | 0.31〜3.66 | 0.02 | 統計学的有意差あり |
| 併用 vs プラセボ | 2.31点 | 0.61〜4.01 | <0.01 | 統計学的有意差あり |
| CBST vs 併用 | -0.31点 | -2.01〜1.37 | 0.70 | 併用の優越性は示されず |
CBST群と併用群はプラセボ群より平均で約2点高く、95%信頼区間は0をまたぎませんでした。一方、シルデナフィル群とプラセボ群の差はP=0.06で、研究が定めた5%水準では有意ではありません。
ここで重要なのは、シルデナフィルが無効と証明されたわけではないことです。解析対象は28人と少なく、信頼区間はわずかに0をまたぎました。多数の大規模試験でPDE5阻害薬の効果が確立している状況で、この小規模試験1本だけから薬の効果を否定するのは不適切です。
同様に、併用群とCBST群の差は有意ではありません。併用が優れている可能性を完全に除外したわけではありませんが、この試験は併用の上乗せ効果を証明していません。
効果量はどう読む?
時間と治療群の相互作用について、研究はIIEF-5で偏η²=0.41を報告し、大きな効果量と解釈しています。全体の治療群効果は偏η²=0.07でした。[1]
偏η²は統計モデル内で説明される分散の割合を示す指標で、IIEF-5が何点改善したかや、何人が性交可能になったかを直接示すものではありません。読者にとって分かりやすいのは、前節の調整平均差と95%信頼区間です。
また、統計学的有意差と臨床的に意味のある変化は同じではありません。IIEF-5で約2点の群間差が、すべての重症度で同じ臨床的意味を持つとは限りません。この研究は重症度別の最小重要差や、治療反応者の割合を主要結果として示していないため、「何人に実感できる改善があったか」は判断できません。
12週間後も効果は続いた?
治療終了12週間後のIIEF-5平均値は、CBST群16.70、併用群17.20で、治療終了時と大きく変わりませんでした。全群をまとめた時点比較では、治療前とフォローアップの差は2.63点、95%信頼区間2.29〜2.97で有意でした。[1]
しかし、治療終了後にシルデナフィルを継続したか、CBSTの技法をどの程度使い続けたか、追加治療を受けたかなどの情報は十分ではありません。追跡も12週間と短いため、長期的な持続効果はこの試験だけでは分かりません。
抑うつ・不安の結果
研究はDASS-21の抑うつ・不安も解析しました。CBST群はシルデナフィル群、併用群より抑うつスコアが低い結果でしたが、プラセボとの差は有意ではありませんでした。併用群はシルデナフィル群より不安スコアが低かった一方、併用群もCBST群もプラセボ群に対して明確な優位性を示していません。[1]
論文の結論は抑うつ・不安への有用性を強く表現していますが、群間比較は一貫していません。心理療法が抑うつや不安に有効かを判断するには、精神症状を主目的とした十分な規模の研究が必要です。この試験を根拠に、うつ病や不安症の治療を置き換えることはできません。
脱落者は21人
登録137人のうち、シルデナフィル群7人、CBST群4人、併用群6人、プラセボ群4人が脱落し、116人が解析されました。全体の脱落率は約15%です。
研究は脱落者を解析に含めない完了者解析を行っています。治療を続けられた人だけを分析すると、効果や受容性を実際より良く見積もる可能性があります。特に週2回、12週間のCBSTは24回相当で負担が大きく、通院時間、費用、課題の継続が脱落へどう影響したかは重要です。
脱落理由が群別に詳細報告されず、割付された全員を原則として解析するintention-to-treat解析も示されていない点は、大きな限界です。
有害事象の報告
論文では、シルデナフィル50mg群で軽い頭痛と一時的な胃部不快感があったと記載されています。重い長期有害事象は報告されなかったとしていますが、発生人数、重症度、併用群での内訳、治療中止との関係は詳しく示されていません。[1]
「詳しい有害事象が報告されていない」ことは「副作用がほとんどない」ことを意味しません。小規模かつ若く健康な参加者に限られ、まれな有害事象を検出できる規模ではありません。
国内のバイアグラ添付文書では、シルデナフィルは25〜50mgを性行為の約1時間前に使用し、1日1回、24時間以上あけるとされています。硝酸薬・NO供与薬やリオシグアトとの併用は禁忌で、心血管系の状態を確認する必要があります。[3]
胸痛時にニトログリセリンを使う人はシルデナフィルを使用できません。服用後に胸痛が出た場合は自己判断で硝酸薬を使わず、救急へシルデナフィルの服用時刻を伝えてください。詳しくはED治療薬服用後の胸痛と硝酸薬で解説しています。
この研究の強み
この研究には次の価値があります。
- 薬、心理療法、併用、プラセボの4群を同じ研究で比較した
- 介入内容と回数が比較的明確である
- IIEF-5だけでなく抑うつ・不安も評価した
- 治療終了12週間後まで追跡した
- 主要な表と解析結果を全文で確認できる
- 臨床試験登録番号、倫理審査、利益相反、資金提供を記載した
特に、薬と心理療法を二者択一にせず、併用も含めて検討した点は実臨床の疑問に近い設計です。
この研究の限界
1. 厳密な無作為化・割付隠蔽ではない可能性
登録順に4群へ交互に割り付けたため、次の割付を予測できる可能性があります。選択バイアスを防ぐ割付隠蔽の方法も十分に説明されていません。
2. CBSTは盲検化できない
心理療法を受けていることは参加者に分かります。主要評価が自己記入式質問票なので、期待や治療者との接触時間の差が結果へ影響した可能性があります。CBST群は週2回50分の面接を受ける一方、薬群・プラセボ群の接触量は同等ではありません。
3. 対象が狭い
18〜38歳、パキスタン在住、異性愛関係にあり、肥満や持病・服用薬のない男性です。中高年、糖尿病、高血圧、心血管疾患、精神疾患、LGBTQ+の人、関係性の形が異なる人への一般化には慎重さが必要です。
4. 非器質性EDの診断手順が不十分
詳細な身体検査や検査値で器質性要因を除外した過程が報告されていません。著者自身もこの点を限界に挙げています。
5. 完了者解析
脱落した21人を除外しており、治療継続が難しかった人の結果が反映されません。脱落理由の詳細やintention-to-treat解析がないため、効果を過大評価する可能性があります。
6. サンプルサイズが小さい
各群の解析対象は28〜30人です。群間差の信頼区間は広く、併用の上乗せ効果やまれな有害事象を評価するには不足しています。
7. 多重比較と評価項目
複数群、複数時点、IIEF-5、抑うつ、不安を比較していますが、多重性への調整方法は十分に明確ではありません。偶然に有意差が出る可能性を考慮する必要があります。
8. 追跡が短い
治療後12週間までで、半年、1年以降の効果や再発は分かりません。
9. 有害事象の報告が粗い
頭痛と胃部不快感の人数、併用群の内訳、治療中止との関係が不足しています。
利益相反と資金提供
著者は利益相反なし、研究資金の提供なしと申告しています。[1] 資金提供がないことは研究の独立性を考える材料ですが、研究デザインや報告上のバイアスがないことを保証するものではありません。
研究はInternational Islamic University Islamabadの倫理審査を受け、参加者から文書同意を得たと報告されています。ClinicalTrials.govの登録番号はNCT04126252です。[1][2]
EAUガイドラインとの関係
EAUの性と生殖に関するガイドラインは、性教育、性的スキル訓練、夫婦・カップル療法、認知行動療法などの心理社会的介入を挙げ、適応がある場合には薬物治療と組み合わせる考え方を示しています。[4]
ただし、ガイドラインの推奨はこの116人RCTだけに依存していません。複数の研究、臨床経験、安全性、患者の希望を総合しています。本試験は心理的介入を検討する根拠の一部と位置づけるのが適切です。
日本性機能学会と日本泌尿器科学会は2025年版男性性機能障害診療ガイドラインを2025年9月19日に刊行しています。[5] 国内診療では、国内承認用法、併用禁忌、心血管リスク、身体要因の評価を優先し、心理療法の実施可否や連携先は医療機関ごとに確認します。
日本の診療へどう適用する?
シルデナフィル50mgは国内承認範囲だが、全員に適するわけではない
研究で使われた50mg頓用は国内の承認用量に含まれます。ただし、65歳以上、肝障害、重度腎障害では25mg開始とされ、硝酸薬・NO供与薬、リオシグアトなどとの併用は禁忌です。[3]
「研究と同じ50mgを試す」のではなく、医師が年齢、肝腎機能、心血管状態、併用薬を確認して用量を決めます。薬の違いと安全な使い分けはシルデナフィル・タダラフィル・バルデナフィルの比較で確認できます。
CBSTは単なる「考え方の問題」ではない
この研究のCBSTは、週2回50分を12週間行い、ホームワークも含む構造化された治療です。励まし、自己流のポジティブ思考、パートナーからのプレッシャーとは異なります。
実際に検討する場合は、性機能の問題に理解のある臨床心理士・公認心理師、精神科・心療内科、性機能外来などと連携します。提供施設、費用、回数、パートナー参加の有無、オンライン対応は事前確認が必要です。
「薬か心理療法か」ではなく原因と希望で組み合わせる
心因性が疑われても、PDE5阻害薬で成功体験を支えながら、失敗不安、回避、自己監視、関係性の悪循環へ心理的に働きかける選択肢があります。反対に、薬を望まない、禁忌がある、副作用が強い場合には心理療法を中心に検討することがあります。
一方、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙、睡眠時無呼吸、低テストステロン、薬剤性などが関係していれば、その評価と治療を省けません。ED治療の完全ガイドでは原因別の選択肢を俯瞰できます。
どのような人に参考になる研究か
このRCTが比較的参考になりやすいのは、次の条件に近い人です。
- 40歳未満
- 性交場面では難しいが、状況による変動がある
- 強い失敗不安や自己監視がある
- 明らかな持病・薬剤性要因がなく、身体評価を受けている
- 構造化された心理療法を継続できる
- シルデナフィルを安全に使用できる
ただし、これらに当てはまっても効果は保証されません。逆に当てはまらない人でも、心理的要因へ対応する価値がないとは限りません。
受診時に相談したいこと
心因性EDかもしれないと感じたら、次の点をメモして受診すると原因を整理しやすくなります。
- いつから始まり、急に起きたか徐々に悪化したか
- 朝立ち、自慰、性交で反応がどう違うか
- 勃起できない、硬さが不足、途中で萎える、どれが中心か
- 相手・場所・時間・飲酒・睡眠で変わるか
- 性欲、射精、オーガズム、痛み、陰茎の曲がり
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、精神疾患
- 処方薬、市販薬、サプリ、個人輸入薬
- 不安、気分の落ち込み、関係性の負担
- 薬だけ、心理療法、併用のどれを希望するか
「心理的な問題と思われたくない」と身体症状だけ伝えたり、反対に「若いから心因性」と決めて持病や薬を省略したりしないことが大切です。
よくある質問
認知行動療法だけで心因性EDは治りますか?
このRCTではCBST群がプラセボ群よりIIEF-5で平均1.99点高い結果でしたが、すべての人が治ったわけではなく、治癒率も示されていません。身体評価、本人の希望、治療へのアクセスを踏まえ、薬や生活調整と組み合わせる場合があります。
シルデナフィルとCBSTを併用すれば単独より効きますか?
併用群はプラセボ群より改善しましたが、CBST単独群との差は-0.31点、95%信頼区間-2.01〜1.37で有意ではありませんでした。この試験だけでは併用の上乗せ効果を証明できません。症状、禁忌、希望、心理的要因に応じて選びます。
シルデナフィル群がプラセボより有意でなかったのは、薬が効かないからですか?
そうとは言えません。群間差は1.65点で、95%信頼区間は-0.07〜3.38、P=0.06でした。小規模で検出力が不足した可能性があり、PDE5阻害薬の有効性全体を否定する結果ではありません。
朝立ちがあれば心理療法だけでよいですか?
朝立ちは手掛かりですが、身体要因を除外する検査ではありません。糖尿病、高血圧、脂質異常症、薬剤、ホルモン、睡眠時無呼吸などが重なることがあります。初診で身体面と心理面を合わせて評価します。
オンラインの認知行動療法でもよいですか?
EAUガイドラインはオンラインを含む心理社会的介入に言及していますが、このRCTは対面の週2回CBSTでした。オンラインへ結果をそのまま当てはめることはできません。提供者の資格、性機能への経験、緊急時対応、費用、個人情報の扱いを確認してください。
薬の副作用が怖いときはどうしますか?
持病、併用薬、以前の副作用を医師へ伝えます。硝酸薬・NO供与薬、リオシグアトはシルデナフィルと併用できません。自己判断で少量に割る、別の人の薬を使う、個人輸入品へ替えるのではなく、心理療法を含む他の選択肢を相談してください。
まとめ
116人を解析した4群RCTでは、12週間のCBSTとシルデナフィル+CBST併用が、プラセボよりIIEF-5を平均約2点改善しました。CBST群と併用群の差は有意ではなく、併用が単独より優れるとは証明されていません。
研究は薬、心理療法、併用、プラセボを直接比較した点に価値があります。一方、登録順の割付、盲検化の限界、狭い対象集団、完了者解析、短い追跡、詳細な器質性評価と有害事象報告の不足があり、結果の一般化には慎重さが必要です。
心因性EDは「気の持ちよう」ではありません。身体面の安全確認を行い、PDE5阻害薬、認知行動療法・心理性機能療法、生活習慣、関係性への支援を本人の希望に合わせて組み合わせることが現実的です。
参考文献・確認資料
- Bilal A, Abbasi NUH. Randomized Placebo Controlled Trial of Sildenafil Citrate, Cognitive Behavior Sex Therapy and Integrated Treatment in Men Diagnosed With Non Organic Erectile Dysfunction. Sexual Medicine. 2022;10(1):100464. DOI: 10.1016/j.esxm.2021.100464. PMID: 34922302(PubMed Central全文)
- ClinicalTrials.gov. Cognitive Behavior Sex Therapy in Nonorganic Erectile Dysfunction. NCT04126252(試験登録)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). バイアグラ錠25mg・50mg/ODフィルム 電子添文(2024年7月改訂、2026年10月15日確認)
- European Association of Urology. Guidelines on Sexual and Reproductive Health: Management of Erectile Dysfunction(2026年10月15日確認)
- 日本性機能学会・日本泌尿器科学会. 2025年版男性性機能障害診療ガイドライン刊行情報(2025年9月19日発行、2026年10月15日確認)
公式情報・原著確認日:2026年10月15日。