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YAG脱毛のインモーション照射は痛みを減らせる?40人研究を解説

40人の前向き研究で、従来型Nd:YAGとインモーション照射の減毛率・痛み・熱傷を比較。効果の読み方、限界、日本の男性へ当てはめる注意点を解説します。

メンズ医療脱毛医師による医療情報レビュー済み公開日: 2026年10月8日更新日: 2026年10月8日公式情報確認日: 2026年10月8日

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1064nm Nd:YAG(ヤグ)レーザーは、太く深い毛や色の濃い肌で選ばれることがある一方、ヒゲ・VIOでは痛みが気になる人も少なくありません。同じYAGでも、1ショットずつ高めのエネルギーを当てる方法と、低めのエネルギーを重ねながらハンドピースを滑らせる「インモーション照射」では、効果と痛みは違うのでしょうか。

2022年の前向き研究は、40人を従来型YAG群とインモーションYAG群に20人ずつ分け、6回照射後の減毛率を最終施術6か月後に評価しました[1]。平均減毛率に統計学的な差はありませんでしたが、痛みはインモーション群で低い結果でした。

ただし、この研究は無作為化比較試験ではありません。割付方法が記載されず、顔・鼠径部・脚・体幹が混在し、男性は40人中8人です。したがって「男性のヒゲならインモーションYAGが同じ効果で必ず痛くない」とまでは言えません。

主対象論文は全文(PMC)、PubMed(PMID: 36143882)、DOIリンクで直接確認できます。この記事では、全文で確認できた数値と、論文に示されていない事項を分けて解説します。

30秒で分かる結論

確認点研究結果読み方
対象40人、各群20人男性は8人、部位は顔・鼠径部・脚・体幹の混合
6か月後の減毛率従来型82.2% vs インモーション79.0%群間差3.2ポイント、P=.16で明確な差なし
痛みVAS(0〜10)従来型6.05 vs インモーション3.552.50ポイント低く、P<.001
発赤スコア従来型2.15 vs インモーション1.65差は統計学的に有意ではない
満足度(1〜8)従来型5.95 vs インモーション6.15明確な差なし
有害事象従来型で1度熱傷1人インモーションの優越性を確定できる人数ではない

実用的な結論は、この小規模研究では、インモーション照射は減毛率を大きく落とさず痛みを減らした可能性があるが、方法間の同等性・非劣性を証明した試験ではない、という範囲です。

研究は何を比較したのか

デザインと対象

イタリアの大学病院と民間診療所で、Fitzpatrick皮膚タイプII〜VIの40人を連続登録した前向き比較研究です[1]。20人が従来型の長パルスNd:YAG、20人が同じ装置のインモーション用ハンドピースで治療を受けました。

論文は「2群に分けた」と記載するだけで、無作為化、割付隠蔽、評価者盲検化は説明していません。患者特性の表から数えると男性は各群4人、合計8人です。年齢、性別、肌タイプに統計学的な群間差はないとされていますが、少人数なので重要な交絡が残る可能性があります。

施術部位は顔、鼠径部、脚、体幹です。部位ごとの毛径、毛密度、性別別の結果は示されていません。男性ヒゲだけを評価した研究ではない点が重要です。

従来型YAG群

従来型群は、1064nm Nd:YAGを次の設定で照射しました[1]。

  • フルエンス:30〜40J/cm²
  • パルス幅:10〜20ms
  • スポット径:10〜15mm
  • 施術回数:6回
  • 間隔:部位により4〜8週間

1ショットずつ重ならないように照射する、一般に高フルエンス単発型と呼ばれる考え方に近い方法です。

インモーションYAG群

インモーション群は、同じMotusAY装置のMoveoHRハンドピースを使いました[1]。

  • フルエンス:3〜8J/cm²
  • 累積エネルギー:1.5〜3.5kJ
  • 周波数:3〜5Hz
  • 10×10cmの範囲でハンドピースを直線・円状に動かし、複数回往復
  • 毛包周囲の赤みを治療終了の目安に使用

1発あたりのエネルギーを下げ、冷却しながら同じ範囲へ複数回照射して熱を積み上げる方法です。日本の広告で「蓄熱式」と説明される手法に似た面はありますが、国内で使われるすべての蓄熱式機器と同じ設定・定義ではありません。

波長・方式・機種の関係は「メンズ医療脱毛のレーザー・脱毛機完全ガイド」で整理しています。

主要な結果:減毛率の差は明確でなかった

最終施術6か月後の平均減毛率は、従来型群82.2%±6.9%、インモーション群79.0%±5.4%でした[1]。論文のP値は.16で、統計学的に明確な差はありません。

群間差は3.2ポイントで、数値上は従来型群が高い結果です。論文は95%信頼区間を示していないため、編集部が公表された平均・標準偏差・各群20人からWelch法で単純計算すると、差の95%信頼区間はおよそ−0.8〜7.2ポイントです。この計算は未調整の事後計算で、論文著者の解析ではありません。

信頼区間が0をまたぐため、従来型が少し上回る可能性も、実質的な差がない可能性も残ります。さらに、この試験は「インモーションが従来型に劣らない」ことを示す非劣性試験として設計されていません。P>.05を根拠に「同じ効果が証明された」とは言えません。

13件のRCT・652人を統合した別のネットワークメタ解析でも、レーザー間の明確な優劣は確定していません。「医療レーザー脱毛の機種で効果は違う?」も合わせて確認すると、単独研究の位置づけを理解しやすくなります。

痛み:VASは2.50ポイント低かった

施術時の平均痛みVAS(0〜10)は、従来型群6.05±1.39、インモーション群3.55±1.15でした[1]。差は2.50ポイントで、論文ではP<.001です。

論文に95%信頼区間はありません。公表値からの未調整Welch法による事後計算では、インモーション群の痛み低下は約1.7〜3.3ポイント(95%信頼区間)です。これは比較的大きい差に見えますが、参加者は照射方法を認識でき、盲検化されていません。冷却、照射音、ハンドピースの動きへの期待が自己申告VASへ影響した可能性があります。

また、この結果は「低フルエンスのインモーションだから痛くない」ことを示唆しますが、同じ痛み差が男性の濃いヒゲやVIOで再現する保証はありません。ヒゲは毛が太く密で、骨に近い部位もあり、痛みの条件が異なります。

麻酔・冷却との比較は「医療脱毛の痛みは保冷剤と麻酔クリームで違う?」も参考になります。

発赤・満足度・有害事象

発赤スコアは従来型2.15±0.99、インモーション1.65±0.67でしたが、論文はP>.05と報告しています[1]。満足度(1〜8)は従来型5.95±1.09、インモーション6.15±1.00で、こちらも明確な差はありませんでした。

重篤な有害事象は報告されていません。従来型群の1人に1度熱傷が起こり、抗菌薬クリームを使い、数週間で瘢痕・色素異常を残さず軽快したとされています[1]。

ただし、各群20人では熱傷や遷延性色素異常の頻度を精密に比べられません。従来型で1件、インモーションで0件という結果だけから、インモーションが安全性で優れると断定することはできません。

この研究の強み

6回施術後を6か月追跡した

単回直後ではなく、6回の治療後、さらに6か月後の減毛率を評価しています。短期の抜け落ちだけでなく、一定期間後の毛量を見た点は有用です。

肌タイプII〜VIを含む

比較的明るい肌から濃い肌まで含み、Nd:YAGが選ばれやすい肌タイプも対象です。ただし、肌タイプ別の効果・安全性は提示されていません。

方法と設定が具体的

フルエンス、パルス幅、スポット径、累積エネルギー、周波数、照射範囲が記載され、2方法の違いを把握できます。

研究の限界

1. 無作為化されていない

連続登録後に2群へ分けていますが、割付方法が示されていません。施術方法を選んだ理由が結果にも関係している選択バイアスを除けません。

2. 各群20人と小規模

減毛率の小さな差や、まれな熱傷・色素異常を検出するには不十分です。事前のサンプルサイズ設計も確認できません。

3. 男性は8人、ヒゲ専用研究ではない

顔・鼠径部・脚・体幹が混在し、部位別・性別の解析はありません。日本人男性のヒゲ・VIOへ数値を直接当てはめられません。

4. 評価者盲検化が不明

同じ医師が毎回評価しており、割付を知らない評価者による毛数カウントかは説明されていません。写真評価の標準化や再現性も不明です。

5. 統計解析の記載に疑問がある

論文は別々の2群を比較しているように読めますが、「paired data(対応のあるデータ)のStudent t検定」を使ったと記載しています。各参加者が両方の方法を受けた左右比較ではないため、解析法の記載または適用が適切か判断しにくい点です。

6. 非劣性試験ではない

減毛率で有意差がなかったことは、効果が同等と証明されたことを意味しません。非劣性マージン、事前仮説、検出力が設定されていません。

7. 機器と施術者の影響を分離できない

研究は特定装置と特定ハンドピースを比較しています。結果を別メーカーの「スライド照射」「蓄熱式」全体へ一般化できません。

利益相反・資金提供

著者らは利益相反なし、外部資金なしと申告しています[1]。研究倫理審査はCalabria CentroのIRB承認(00373/2019、2019年12月17日)を受け、参加者の同意を取得したと記載されています。

一方、研究機器はDEKA社製です。論文で企業資金や著者の利益相反が申告されていないことは、割付・盲検化・解析法など研究デザイン上の限界を解消するものではありません。

日本の男性へどう当てはめるか

「インモーション」「蓄熱式」だけで効果を決めない

研究から分かるのは、特定の1064nm Nd:YAG装置を特定設定で6回使った結果です。「インモーション」「蓄熱式」という表示だけで同じ減毛率や痛みになるとは限りません。

確認したいのは次の点です。

  1. 実際に使う波長と機器名
  2. 1発あたりのフルエンス、パルス幅、照射回数の考え方
  3. ヒゲ・VIO・体幹で設定をどう変えるか
  4. 毛包周囲の赤みなど終了点を誰が判断するか
  5. 痛みが強い場合の冷却・麻酔・設定変更
  6. 熱傷、毛嚢炎、硬毛化が疑われた場合の診察
  7. コース終了後の追加照射料金

国内承認は製品単位で確認する

海外論文に使われた装置と、日本で承認されている医療機器は同一とは限りません。1064nmという波長だけで一括承認されるのではなく、製品・使用目的ごとに確認が必要です。

PMDAの医療機器情報検索で販売名・承認番号を確認し、未承認機器や承認範囲外の使用なら、入手経路、国内代替品、医薬品副作用被害救済制度の対象外となり得る点について説明を受けてください[2]。

ヒゲでの効果はこの研究だけでは決められない

ヒゲは太く深い毛が多く、Nd:YAGが選ばれることがありますが、今回の顔症例数・男性顔症例数は十分ではありません。「ヒゲ脱毛のYAG・アレキ・ダイオード比較」も参照し、過去の反応と肌色を含めて医師へ相談してください。

※本記事には広告を含みます。掲載の有無は論文評価を変えません。

複数院を比べるときは、機器名だけでなく、ヒゲ・VIOで実際に使う照射方式と追加費用を同じ条件で比べましょう。

全体の選び方は「メンズ医療脱毛の完全ガイド」も参考になります。

よくある質問

インモーションYAGは従来型YAGと同じくらい減りますか?

この研究では平均減毛率79.0%対82.2%、P=.16で明確な差はありませんでした。ただし同等性・非劣性を証明する設計ではないため、「同じ効果が確定」とは言えません。

痛みはどれくらい違いましたか?

0〜10のVASで、従来型6.05、インモーション3.55でした。平均差は2.50ポイント、P<.001です。公表値からの未調整事後計算では95%信頼区間はおよそ1.7〜3.3ポイントですが、参加者は盲検化されていません。

この研究はランダム化比較試験ですか?

いいえ。前向き比較研究ですが、無作為化や割付隠蔽の記載はありません。2群の選ばれ方による偏りを否定できません。

男性のヒゲにも79%減毛が期待できますか?

そのようには言えません。40人中男性は8人で、顔・鼠径部・脚・体幹が混在し、男性ヒゲ専用の解析はありません。

インモーション照射は熱傷が起きませんか?

研究では従来型群に1度熱傷が1件、インモーション群には報告なしでした。しかし各群20人なので、方法間の安全性差を確定できません。

「蓄熱式」と同じ意味ですか?

低めのエネルギーを複数回重ねる点は似ていますが、すべての蓄熱式機器と同じではありません。波長、フルエンス、周波数、冷却、終了点、照射面積を確認してください。

研究で使った機器は日本で承認されていますか?

海外論文の機器が日本でも同一の承認範囲で使われているとは限りません。クリニックで販売名・承認番号を確認し、PMDAの製品情報と照合してください。

どちらを選べばよいですか?

痛みを抑えたい人にはインモーションが候補になり得ますが、この1研究だけで決めないでください。肌色、毛の深さ、部位、過去の照射反応、使用機器、医師の設定方針、総額を比較する必要があります。

まとめ

40人の前向き研究では、6回施術後6か月の平均減毛率は従来型Nd:YAG 82.2%、インモーションNd:YAG 79.0%で、明確な群間差はありませんでした。一方、痛みVASは6.05対3.55で、インモーション群が2.50ポイント低い結果でした。

ただし、無作為化なし、各群20人、男性8人、複数部位の混在、盲検化不明、非劣性設計ではないこと、解析法の記載に疑問があることが大きな限界です。従来型群で1度熱傷が1件ありましたが、安全性差を判断できる人数ではありません。

したがって、「インモーションYAGは痛みを減らす可能性がある」という参考にはなりますが、「男性ヒゲでも従来型と同じ効果で安全」と保証する研究ではありません。方式名だけで選ばず、実際の機器・設定・部位別の方針・トラブル時の診療体制を確認してください。

参考文献・確認資料

  1. Nistico SP, Bennardo L, Bennardo S, Marigliano M, Zappia E, Silvestri M, Cannarozzo G. Comparing Traditional and in Motion Nd:YAG Laser in Hair Removal: A Prospective Study. Medicina (Kaunas). 2022;58(9):1205. DOI: 10.3390/medicina58091205. PMID: 36143882. PMCID: PMC9503442.(全文確認)
  2. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). 医療機器情報検索.(2026年10月8日確認)
  3. Kao YC, Lin DZ, Kang YN, Chang CJ, Chiu WK, Chen C. Efficacy of Laser in Hair Removal: A Network Meta-analysis. J Cosmet Laser Ther. 2023;25(1-4):7-19. DOI: 10.1080/14764172.2023.2221838. PMID: 37493187.(抄録確認)

※本記事は研究論文・公的資料に基づく一般的な医療情報であり、個別の診断や照射設定を指示するものではありません。強い灼熱痛、水疱、びらん、長引く赤み、色素変化があれば施術施設へ連絡してください。

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