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医療レーザー脱毛の痛み対策として、保冷剤と麻酔クリームのどちらがよいか迷う人は少なくありません。
結論からいうと、30人を対象に左右のワキで比較した無作為化試験では、照射直後は保冷剤側の痛みが少なく、5分後はリドカイン・プリロカイン外用側の痛みが少ないという、時間で結果が入れ替わる結果でした。[1]
この研究は「保冷剤が麻酔クリームより常に優れる」と証明したものではありません。対象は女性のワキ、使用機器は810nmダイオードレーザーであり、男性ヒゲ・VIO・Nd:YAGレーザーへそのまま当てはめることはできません。
主対象論文の原文はPubMed(PMID: 36410628)と出版社ページ(DOI: 10.1016/j.jaad.2022.11.022)で確認できます。この記事では、公開されている抄録と出版社ページの表示範囲で確認できた事項、確認できなかった事項を分けて解説します。
先に要点|このRCTから言えること・言えないこと
| 論点 | 研究から確認できること | 言えないこと |
|---|---|---|
| 照射直後の痛み | 麻酔クリーム側より保冷剤側でVASが低かった(P=.03) | どの部位・機器でも保冷剤が上とは言えない |
| 5分後の痛み | 保冷剤側より麻酔クリーム側でVASが低かった(P=.03) | 麻酔クリームが照射中も常に上とは言えない |
| 好み | 88回中53回(60.2%)で保冷剤が選ばれた | P=.055のため、明確な優越とは断定できない |
| 安全性 | 重篤な有害事象は報告されなかった | まれな副作用がないとは言えない |
| 脱毛効果 | この試験の主目的ではない | 痛み対策で減毛効果が変わるかは判断できない |
| 男性への適用 | 疼痛対策を考える参考にはなる | 男性ヒゲ・VIOの数値として使えない |
どんな研究だった?
主対象論文は、RoongpisuthipongらがJournal of the American Academy of Dermatologyに報告した、単施設・評価者盲検・無作為化比較試験です。2022年11月にオンライン公開され、2023年3月号に掲載されました。[1]
PICOで整理
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 21〜65歳の女性30人、白人またはアジア人、Fitzpatrick皮膚タイプI〜III、粗く濃いワキ毛 |
| 介入 | 一方のワキに保冷剤による事前冷却 |
| 比較 | 反対側のワキに2.5%リドカイン+2.5%プリロカイン外用 |
| 照射 | 810nmダイオードレーザー、月1回、計3回 |
| 主要評価 | 照射直後と5分後の参加者報告VAS |
| その他 | 紅斑、全体の浮腫、毛包周囲浮腫、皮膚温、患者選好、有害事象 |
| 登録 | ClinicalTrials.gov NCT02318654 |
同じ参加者の左右を比較する設計は、痛みの感じ方という個人差が大きい評価で、参加者間の違いをある程度抑えられる利点があります。一方、どちら側に何を使ったかを参加者自身は認識できるため、参加者の完全な盲検化は困難です。
研究手続きは2014年12月30日から2015年4月30日に行われました。30人の平均年齢は32.2±7.9歳です。予定された90回の来院照射のうち88回(98%)が実施・無作為化され、左右を合わせると176部位照射に相当します。2人は3回目を完了しませんでした。[1]
結果1|照射直後は保冷剤側の痛みが少なかった
照射直後のVASは、リドカイン・プリロカイン外用側の方が保冷剤側より高く、群間差はP=.03でした。[1]
これは、冷却による感覚鈍化が照射直後に強く出た可能性と整合します。ただし、公開抄録と検索可能な出版社表示範囲では、両側の平均VAS差、標準偏差、95%信頼区間を確認できませんでした。
そのため、この記事では「統計学的な差は報告された」とはいえますが、差が臨床的にどの程度大きかったかまでは断定しません。P値だけでは効果の大きさを示せないためです。
結果2|5分後は麻酔クリーム側の痛みが少なかった
照射5分後は結果が逆転し、保冷剤側のVASがリドカイン・プリロカイン外用側より高く、P=.03でした。[1]
保冷剤の冷却効果は比較的短時間で薄れ、外用局所麻酔薬は照射後も作用が残った可能性があります。著者らも、この時間差で結果が変わる点を論じています。
ここでも平均差と95%信頼区間はアクセスできた範囲に掲載されていないため、数値を補って推測することはできません。
結果3|60.2%が保冷剤を好んだが、統計学的には境界的
88回の評価のうち53回(60.2%)で参加者は保冷剤を好みました。P値は.055でした。[1]
一般にP<.05を基準とするなら、これは統計学的有意差に達していません。「6割が保冷剤を選んだ」という記述はできますが、「保冷剤の方が好まれることが証明された」と言い換えるのは不適切です。
好みには痛みだけでなく、塗布待ち時間、冷たさ、べたつき、準備の手間なども影響し得ます。
有害事象|重篤例はなし。ただし安全性試験ではない
論文抄録では重篤な有害事象は報告されていません。[1]
ただし、30人・3回の小規模試験は、まれな副作用を検出するには不十分です。さらに、保冷剤にも長時間の直接接触による凍傷・冷傷の可能性があり、外用局所麻酔薬にもアレルギー、中毒症状、メトヘモグロビン血症などのリスクがあります。
「RCTで重篤例がなかった」ことと、「自己流で使っても安全」は別です。
日本の麻酔クリームとの関係|エムラは皮膚レーザー時の疼痛緩和で承認
日本のエムラクリームは、リドカインとプロピトカインの配合剤です。PMDAの2026年3月改訂添付文書では、皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和が効能に含まれています。[2]
成人の通常用法は、レーザー照射予定部位10cm²あたり1gを密封法で60分間塗布し、1回10gまで、塗布時間は120分を超えないこととされています。[2]
ただし、今回の海外RCTは女性のワキ脱毛を対象にした研究です。国内承認があることは、男性ヒゲやVIOで同じ程度の疼痛差が出ることを意味しません。また、クリニックごとに使用製剤、対象部位、塗布方法、待ち時間、料金が異なります。
保冷剤なら自宅で冷やして行けばよい?
自己判断で強く冷やしたり、長時間当て続けたりするのは避けてください。
研究では医療機関の管理下で方法を統一して比較しています。実際の施術機器には接触冷却、冷却ガス、冷風などが組み込まれている場合があり、追加の事前冷却が必要とは限りません。
また、皮膚温が過度に下がると、皮膚反応の評価や照射手順に影響する可能性があります。事前冷却を希望する場合は、予約した医療機関へ確認してください。
男性ヒゲへはどこまで当てはめられる?
男性ヒゲは、ワキと比べて毛の密度、毛の太さ、照射面積、骨に近い部位、使用されるレーザーが異なります。Nd:YAGレーザーが選択されることもあります。
今回の研究参加者は全員女性で、部位はワキ、レーザーは810nmダイオードでした。したがって、
- ヒゲでも保冷剤の方が直後痛を必ず減らす
- 麻酔クリームを使えば5分後の痛みが同じ程度になる
- YAG照射でも同じ結果になる
- 鼻下・アゴ・頬で差がない
とは言えません。
ヒゲ全体の痛み、麻酔クリーム、笑気麻酔、波長ごとの考え方はヒゲ脱毛の痛みと麻酔で整理しています。
メンズVIOへはどこまで当てはめられる?
VIOも痛みを強く感じやすい部位ですが、皮膚色、毛の密度、粘膜に近い部位、塗布可能範囲などがワキと異なります。
麻酔クリームを使える範囲や、塗布を本人が行うのか院内で行うのかも医療機関によって異なります。VIOの回数・痛み・照射範囲はメンズVIO医療脱毛の解説を参照してください。
「保冷剤か麻酔か」より確認したい実務ポイント
契約前には、次の順で確認すると実用的です。
- 希望部位で使うレーザーと冷却方式
- 麻酔クリームを使える部位
- 麻酔の塗布量・塗布時間・来院時間
- 麻酔料金が1回・1部位・1本のどれか
- 施術前の自己冷却が許可されているか
- 痛みが強い場合に照射を止められるか
- 設定・照射テンポ・機器変更を相談できるか
- 水疱や強い赤みが出た場合の診察体制
料金だけでなく、麻酔を毎回使う可能性まで含めた総額を見ましょう。麻酔1回3,000円を10回使えば、それだけで30,000円です。
このRCTの強み
左右比較で個人差を抑えた
痛みの感じ方は人によって大きく異なります。同じ参加者の左右で比べることで、参加者間の痛覚差を減らしています。
同じ施術を3回繰り返した
単回だけでなく、月1回を計3回比較しました。88回の来院照射が評価されています。
評価者を盲検化した
紅斑や浮腫を写真で評価する2人の評価者は割付を知らない設計でした。
事前登録がある
ClinicalTrials.govのNCT02318654として登録されています。[3]
このRCTの限界
1. 参加者は30人と少ない
小規模なパイロット試験で、差の推定精度には限界があります。
2. 全員女性・ワキのみ
男性ヒゲ・男性VIO・全身脱毛へ直接外挿できません。
3. 肌タイプI〜IIIのみ
Fitzpatrick IV〜VIや強い日焼け肌の結果は分かりません。
4. 810nmダイオードのみ
755nmアレキサンドライト、1064nm Nd:YAG、IPLの結果ではありません。
5. 効果量と95%CIを確認できない
公開抄録ではP値は示されていますが、群間平均差と95%信頼区間は確認できません。差の実用的な大きさを判断しにくい点です。
6. 長期減毛は評価していない
主要評価は照射直後と5分後の痛みです。毛数減少、再発毛、次回照射時の効果は主要結果ではありません。
7. 参加者の完全盲検化は難しい
冷たさとクリーム塗布の違いは本人に分かります。期待や好みがVASへ影響する可能性があります。
利益相反・資金
PubMedの利益相反欄では、利益相反なしと記載されています。[1]
アクセスできた抄録と出版社ページの表示範囲では、資金提供の詳細を確認できませんでした。資金源がないと断定するのではなく、この記事では「確認範囲では不明」と扱います。
国内診療への適用範囲
この研究から国内のメンズ医療脱毛へ持ち込める最も妥当な示唆は、疼痛対策の優劣は評価時点で変わり、保冷剤と麻酔クリームのどちらか一方を絶対視できないという点です。
実際の選択では、
- 部位
- レーザーの波長
- 照射設定
- 機器内蔵の冷却
- 麻酔薬の適応と禁忌
- 塗布待ち時間
- 追加料金
- 過去の痛みと皮膚反応
を合わせて判断します。
医療脱毛全体の選び方はメンズ医療脱毛の完全ガイド、施術前後の剃毛・日焼け・保湿は医療脱毛前後のケアも参考にしてください。
よくある質問
Q. 保冷剤は麻酔クリームより効きますか?
照射直後は保冷剤側のVASが低く、5分後は麻酔クリーム側のVASが低い結果でした。どちらが常に優れるとは言えません。
Q. 研究の参加者は何人ですか?
女性30人です。平均年齢は32.2±7.9歳で、白人またはアジア人、Fitzpatrick I〜III、粗く濃いワキ毛が条件でした。
Q. 何回照射しましたか?
810nmダイオードレーザーを月1回、計3回です。予定90回の来院照射のうち88回が実施されました。
Q. 60.2%が保冷剤を好んだなら保冷剤が上ですか?
P=.055で、一般的な5%有意水準には達していません。好みの傾向は示しますが、優越性の証明とは言えません。
Q. ヒゲ脱毛にも同じ結果になりますか?
分かりません。対象は女性のワキで、男性ヒゲ・Nd:YAGの研究ではありません。
Q. 麻酔クリームは日本で承認されていますか?
エムラクリームは皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和で承認されています。用量・塗布時間には上限があり、医療機関の指示に従う必要があります。[2]
Q. 自宅の保冷剤を持参して冷やしてよいですか?
自己判断せず施術施設へ確認してください。機器の冷却方式や院内手順によって対応が異なります。
Q. 麻酔をすると脱毛効果が落ちますか?
このRCTは長期減毛を主要評価にしていないため判断できません。痛みの差と脱毛効果の差は別に評価する必要があります。
まとめ|直後は保冷剤、5分後は麻酔クリーム。ただし男性ヒゲの結論ではない
30人の女性を対象に、左右のワキで保冷剤とリドカイン・プリロカイン外用を比較したRCTでは、照射直後は保冷剤側、5分後は麻酔クリーム側でVASが低い結果でした。いずれもP=.03です。[1]
参加者は88回中53回(60.2%)で保冷剤を好みましたが、P=.055で統計学的有意差には達していません。重篤な有害事象は報告されませんでした。
ただし、対象は女性のワキ、機器は810nmダイオードレーザーです。男性ヒゲ・VIO・YAGレーザーへ直接当てはめることはできません。公開抄録では平均差や95%信頼区間を確認できないため、効果の大きさにも不確実性があります。
実際の脱毛では、保冷剤と麻酔クリームの二択だけでなく、機器内蔵冷却、照射設定、部位、麻酔料金、塗布時間、皮膚状態を含めて医療機関と相談してください。
参考文献・確認資料
-
Roongpisuthipong W, Christensen RE, Dirr MA, Anvery N, Geisler A, Schaeffer M, Waldman A, Brieva JC, Alam M. Comparative effectiveness of ice packs versus topical lidocaine-prilocaine mixture for pain control in laser hair removal of the axilla: A rater-blinded randomized controlled trial. Journal of the American Academy of Dermatology. 2023;88(3):617-622. DOI: 10.1016/j.jaad.2022.11.022. PMID: 36410628. PubMed / 出版社ページ.
-
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). エムラクリーム 添付文書. 2026年3月改訂(第2版). 添付文書PDF.
-
ClinicalTrials.gov. Comparing the Efficacy of Ice Pack Versus Topical EMLA for Pain Control in Laser Axillary Hair Removal: A Randomized Control Trial. NCT02318654. 試験登録.
※本記事は研究論文・公的資料に基づく一般的な医療情報です。個別の診断や麻酔薬の使用指示ではありません。局所麻酔薬を自己判断で大量・広範囲・長時間使用しないでください。強い灼熱痛、水疱、著しい腫れ、皮膚色の変化があれば施術施設へ相談してください。
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