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糖尿病に伴うED(勃起不全)は、血管内皮障害、神経障害、海綿体組織の変化などが重なり、PDE5阻害薬だけでは十分に改善しないことがあります。そこで注目されているのが、幹細胞治療と低出力体外衝撃波治療(LI-ESWT)を組み合わせる「再生医療的アプローチ」です。
2025年に公表された無作為化比較試験(RCT)では、治療抵抗性の糖尿病ED患者33人を、胎盤由来間葉系幹細胞(hPMSC)単独、LI-ESWT単独、両者の併用の3群に分け、6か月後まで比較しました。併用群ではIIEF-EFや夜間勃起時間など、一部の指標が単独治療群より良好でした。[1,2]
ただし、この結果を「幹細胞+衝撃波で糖尿病EDが治る」と読むことはできません。対象は33人と少なく、偽治療群も標準治療群もなく、主要評価項目の群間差に95%信頼区間が示されていません。性交成功率(SEP-2、SEP-3)には有意差がなく、安全性の観察も6か月に限られます。
この記事では、元論文の全文を確認し、研究デザイン、対象、介入、効果量、P値、95%信頼区間の有無、有害事象、限界、利益相反、日本での位置づけまで順に整理します。
元論文: PubMed Centralで全文を読む[1]
先に結論|有望な予備データだが、実用化を判断できる段階ではない
このRCTの結論を先にまとめます。
| 確認ポイント | 結果 | 読み方 |
|---|---|---|
| 参加者 | 33人、各群11人で無作為割付 | 非常に小規模 |
| 完了者 | 論文中の記載に不一致あり | 脱落の群と人数に注意 |
| 主要評価 | IIEF-EFのベースラインからの変化 | 6か月時の平均値は併用群19.8点 |
| EHS>2 | 併用群70%、hPMSC群45.45%、LI-ESWT群40% | 群間P=0.045 |
| SEP-2 | 6か月時に群間差なし | P=0.866 |
| SEP-3 | 6か月時に群間差なし | P=0.789 |
| 総勃起時間 | 併用群22.20分、hPMSC群18.20分、LI-ESWT群11.00分 | 群間P=0.001 |
| 十分な勃起時間 | 併用群11.90分、hPMSC群11.40分、LI-ESWT群10.70分 | 群間P=0.004 |
| 重篤な有害事象 | 報告なし | 33人・6か月ではまれな害は評価困難 |
| 95%信頼区間 | 主要な群間差について報告なし | 効果の精度を判断しにくい |
生理学的な指標と質問票では併用群に改善のシグナルがありましたが、患者にとって直接的な性交成功率は明確に改善していません。 さらに、比較した3群はいずれも研究的治療で、プラセボ、偽照射、PDE5阻害薬などの標準治療との比較ではありません。
したがって、この研究は「次の大規模試験を行う理由」を示す予備的な研究と捉えるのが妥当です。現時点で、日本のED患者がこの治療を標準治療として選ぶ根拠にはなりません。
研究の基本情報
対象論文は、Jiらが2025年に『Stem Cell Research & Therapy』へ発表した前向き無作為化比較試験です。[1]
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究デザイン | 前向き、3群、無作為化比較試験 |
| 実施地域 | 中国、単施設 |
| 登録 | ChiCTR2200059271 |
| 対象 | 治療抵抗性の2型糖尿病ED患者33人 |
| 年齢 | 20〜60歳 |
| 割付 | hPMSC群11人、LI-ESWT群11人、併用群11人 |
| 観察期間 | 1、3、6か月 |
| 主要評価項目 | IIEF-EFのベースラインからの変化量 |
| 副次評価項目 | EHS、SEP-2、SEP-3、NPT-Rigiscan指標、安全性 |
| 資金 | 中国国家自然科学基金、空軍軍医大学の臨床研究プロジェクト |
| 利益相反 | 著者は競合する利益なしと申告 |
無作為化にはコンピューター生成方式が使われました。一方、盲検化の方法は明確ではなく、偽の細胞注射や偽の衝撃波照射を行う対照群もありません。治療内容が大きく異なるため、参加者や実施者が自分の群を推測できる可能性があります。
対象は「一般的なED患者」ではない
参加者は、単にEDがある男性ではありません。主な組み入れ条件は次の通りでした。
- 20〜60歳の男性
- 2型糖尿病の罹病期間が5年以上
- EDの期間が3か月以上10年未満
- IIEF-EFが22点未満
- 3か月を超えて安定した性的パートナーがいる
- 無作為化前2週間はPDE5阻害薬などのED治療を中止
除外条件には、重度の内分泌性・神経性ED、陰茎の動脈・海綿体病変による血管性ED、重い精神疾患、脊髄損傷、陰茎の解剖学的異常、前立腺全摘後、骨盤放射線治療後、コントロール不良の高血圧、空腹時血糖7.0mmol/L超などが含まれました。[1]
つまり、この試験結果は、
- 糖尿病のないED
- 前立腺手術後のED
- 血糖管理が不良な糖尿病ED
- 60歳を超える高齢者
- 重い心血管疾患がある人
- 神経障害が主因のED
へそのまま当てはめられません。
糖尿病EDの一般的な診断・治療の全体像を知りたい場合は、まずED治療の完全ガイドも確認してください。
3群で何を比較した?
hPMSC単独群
hPMSCは、ヒト胎盤から分離・培養した間葉系幹細胞です。研究では1mLあたり1×10の7乗個に調整した細胞懸濁液1mLを、陰茎海綿体の左右へ0.5mLずつ、1回注射しました。注射後は陰茎基部のバンドを30分維持しています。[1]
これは市販のED治療薬のような確立した製剤を投与した試験ではありません。採取、培養、品質管理、細胞数、投与部位などが異なれば、同じ「幹細胞治療」という名称でも同一の治療とは限りません。
LI-ESWT単独群
LI-ESWTは、低いエネルギーの衝撃波を陰茎海綿体と陰茎脚へ照射する治療です。試験ではRENOVAという装置を使い、エネルギー密度0.09mJ/mm²、毎分120パルスで実施しました。
1回の治療では5か所に各1,000発、合計5,000発を照射しています。論文の記載上、併用群では細胞注射24時間後から週1回、4週間のLI-ESWTを開始しました。[1]
衝撃波治療は、装置、焦点型か放射状か、エネルギー、照射部位、総発数、治療間隔が研究ごとに異なります。別の装置や別プロトコルへ、今回の結果をそのまま置き換えることはできません。
併用群
併用群は、hPMSCの陰茎海綿体注射とLI-ESWTを順に受けました。研究者は、衝撃波が局所環境を変え、移植細胞の生存や働きを高める可能性を想定しています。
ただし、これは主に動物実験などから考えられた仮説です。今回の臨床試験では、細胞が陰茎組織にどの程度残ったか、血管新生や神経再生が実際に起きたかを直接測定していません。臨床スコアが改善したことと、想定した再生メカニズムが証明されたことは別です。
評価に使われた4つの指標
IIEF-EF
IIEF-EFは、国際勃起機能スコアのうち勃起機能を評価する6項目です。一般に6〜30点で、点数が高いほど勃起機能が良いと解釈します。
質問票なので患者自身の実感を反映できる一方、期待、心理状態、パートナーとの関係、盲検化の有無などの影響を受ける可能性があります。
EHS
EHSは勃起の硬さを0〜4で評価する尺度です。今回の論文は「EHSが2を超えた人」の割合を比較しました。
EHSが3なら挿入には十分な硬さ、4なら完全に硬い状態の目安です。EHS>2という閾値は臨床的には分かりやすい一方、自己評価である点は考慮が必要です。
SEP-2とSEP-3
SEPは性交ごとの質問です。
- SEP-2:挿入できたか
- SEP-3:性交を成功させるまで勃起を維持できたか
スコアが上がっても性交成功につながるとは限らないため、患者にとって重要な指標です。
NPT-Rigiscan
Rigiscanは、睡眠中の陰茎周径や硬さを記録します。今回の試験では、総勃起時間、十分な勃起時間、亀頭冠状溝と陰茎基部の硬さ、膨張の変化などを評価しました。
質問票より客観的に見えますが、1晩の睡眠状態、測定環境、装着状態などの影響を受けます。また、夜間勃起の改善が性交時の成功を必ず意味するわけではありません。
IIEF-EFは併用群で最も高かった
論文では、6か月時点のIIEF-EF平均値を次のように報告しています。[1]
| 群 | ベースライン | 1か月 | 3か月 | 6か月 |
|---|---|---|---|---|
| hPMSC単独 | 論文表では中央値12.00 | 11.22±0.91 | 13.11±0.60 | 17.50±0.53 |
| LI-ESWT単独 | 論文表では中央値11.00 | 12.00±0.25 | 13.75±0.86 | 16.67±1.39 |
| 併用 | 論文表では中央値13.00 | 14.11±0.61 | 16.90±0.43 | 19.80±0.31 |
著者らは、1、3、6か月のすべてで併用群が単独群より高かったとし、P<0.05と報告しました。
一方、ここには重要な注意点があります。
第一に、論文はベースラインを中央値と四分位範囲で示した表と、本文中の平均値表記を混在させています。第二に、主要評価項目は「ベースラインからの変化量」とされていますが、群間の平均差、その95%信頼区間、各比較の正確なP値が示されていません。
したがって、併用群が良い方向だったことは分かっても、単独群より平均何点優れていたのか、その差がどの程度の精度で推定されているのかは十分に判断できません。
また、IIEF-EFが統計学的に上がったとしても、全員が性交可能になったわけではありません。次のSEP結果と一緒に読む必要があります。
EHS>2は併用群70%、ただし人数では7人
6か月時点でEHS>2だった割合は、
- hPMSC単独群:45.45%(5人)
- LI-ESWT単独群:40%(4人)
- 併用群:70%(7人)
- 群間P=0.045
でした。[1]
割合だけ見ると、併用群が大きく上回っています。しかし、分母は各群10〜11人です。併用群で1人結果が変わるだけでも割合は約9〜10ポイント動きます。
また、3群の比較でP=0.045は有意水準0.05をわずかに下回る結果です。複数の評価項目と複数の時点を検定していることを考えると、偶然の有意差である可能性を完全には除けません。
この論文はEHS>2の群間差について95%信頼区間を示していません。そのため「真の差がどこからどこまであり得るか」は評価しにくい状態です。
SEP-2・SEP-3には有意な群間差がなかった
6か月時点の挿入成功(SEP-2)は、
- hPMSC単独群:27.27%(3人)
- LI-ESWT単独群:40%(4人)
- 併用群:36.36%(4人)
- P=0.866
でした。
性交を最後まで成功させたSEP-3は、
- hPMSC単独群:18.18%(2人)
- LI-ESWT単独群:30%(3人)
- 併用群:18.18%(2人)
- P=0.789
でした。[1]
どちらも群間差は有意ではなく、併用群が最も良いわけでもありません。
研究者は、心理的不安、長期EDからの適応、疲労、ストレス、関係性などが性交成功へ影響した可能性を考察しています。しかし、心理尺度やパートナー評価を十分に測定していないため、理由を特定することはできません。
この結果は非常に重要です。RigiscanやIIEF-EFが改善しても、患者が最も知りたい「実際の性交が成功したか」では明確な優位性が示されなかったからです。
夜間の総勃起時間は併用群22.20分
6か月時点のRigiscan結果は次の通りでした。値は中央値(四分位範囲)です。[1]
| 指標 | hPMSC単独 | LI-ESWT単独 | 併用 | 群間P値 |
|---|---|---|---|---|
| 総勃起時間 | 18.20分(13.35〜20.55) | 11.00分(11.00〜12.00) | 22.20分(15.20〜30.25) | 0.001 |
| 十分な勃起時間 | 11.40分(10.75〜12.00) | 10.70分(10.33〜11.28) | 11.90分(11.55〜12.35) | 0.004 |
| 冠状溝の平均硬度 | 47.00 | 47.50 | 49.00 | 0.055 |
| 基部の平均硬度 | 46.00 | 44.00 | 47.00 | 0.077 |
総勃起時間は3群で差があり、事後比較でも併用群はLI-ESWT単独群およびhPMSC単独群より長かったと報告されました。十分な勃起時間では、併用群がLI-ESWT単独群より長いという事後比較が示されています。
ただし、総勃起時間の中央値は併用群22.20分に対してhPMSC単独群18.20分で、差は4分です。十分な勃起時間は併用群11.90分、hPMSC単独群11.40分、LI-ESWT単独群10.70分で、絶対差は小さめです。
さらに、各群間差の95%信頼区間は報告されていません。P値は「差がないと仮定したときに、これほどのデータが得られる確率」に関する情報であり、効果の大きさや臨床的重要性そのものではありません。
有害事象|重篤例なしでも安全性は確定できない
論文は、疼痛、血腫、血尿、皮下出血などを観察しました。重篤な有害事象は3群のいずれにも報告されていません。
hPMSC単独群と併用群の一部では、軽い局所疼痛が起きました。CTCAE v5.0のGrade 1に分類され、治療を必要とせず1週間以内に消失したとされています。[1]
ただし、論文は局所疼痛が各群で何人に起きたかを明示していません。また、33人、6か月の観察では、
- まれな感染
- 遅発性の免疫反応
- 異常な組織増殖
- 長期的な線維化
- 1年以上経過してからの有害事象
を十分に除外できません。
「重篤な有害事象がなかった」は、この小規模試験の観察期間内の事実です。「長期的に安全である」「誰にでも安全である」という意味ではありません。
この研究の8つの限界
1. 33人と非常に少ない
各群は11人で開始し、脱落もありました。割合や平均値が少人数の影響を大きく受けます。研究者自身も、募集困難と倫理的理由から予定よりサンプル数を減らし、事後的な検出力解析を行ったと記載しています。
事後的検出力が75%を超えたとしても、当初から十分な人数を確保した試験と同じ強さにはなりません。
2. プラセボ・偽治療群がない
陰茎注射も衝撃波治療も、期待効果が大きくなりやすい介入です。偽注射や偽照射との比較がないため、自然経過、期待、受診による行動変化などを分離できません。
3. 標準治療との比較ではない
全参加者はED治療薬を中止し、hPMSC、LI-ESWT、併用のいずれかを受けました。PDE5阻害薬を適切に使った群や、糖尿病管理を強化した群との比較ではありません。
したがって、「標準治療より優れている」「薬が効かない人は幹細胞を選ぶべき」とは結論できません。
4. 95%信頼区間が示されていない
主要評価項目を含む重要な群間差で95%信頼区間が報告されていません。小規模試験ほど推定値の不確実性は大きくなるため、P値だけでなく信頼区間が重要です。
この論文からは、効果量の下限と上限を十分に把握できません。
5. 多数の評価項目と時点を検定している
IIEF-EF、EHS、SEP-2、SEP-3、複数のRigiscan指標を、1、3、6か月で評価しています。検定回数が増えると、偶然P<0.05になる結果が含まれる可能性も高まります。
多重比較への対応が十分だったかは、結果の頑健性を考えるうえで重要です。
6. 論文内に人数・脱落群の不一致がある
方法の節ではLI-ESWT群の1人が効果不満で脱落し、併用群の1人が追跡不能と記載されています。一方、結果の節ではhPMSC群の1人が効果不満で中止し、併用群の1人が転居で中止とされています。
さらに、ベースライン表はhPMSC 11人、LI-ESWT 10人、併用11人としており、記述との整合が分かりにくい部分があります。小さな試験では1人の違いが結果へ与える影響が大きいため、これは軽視できません。
7. 「相乗効果」を証明したとは言いにくい
併用群が単独群より良い指標があったことは、相乗効果の可能性を示します。しかし、真の相乗効果を示すには、各治療の効果を足した以上の作用があるかを適切な交互作用解析などで確かめる必要があります。
この研究だけで、生物学的な相乗作用が確立したとはいえません。
8. 単施設・短期で対象が狭い
研究は単施設で、追跡は6か月です。血糖管理が比較的良好で、安定したパートナーがいる20〜60歳の男性が中心です。著者らも、性的指向や関係性の多様性を十分に含めていない選択バイアスを認めています。
利益相反と研究資金
著者らは競合する利益はないと申告しています。[1,2]
研究資金は、
- National Natural Science Foundation of China(Project No. 81872077)
- Air Force Military Medical Universityの臨床研究プロジェクト(2021LC2110)
から提供されました。
企業資金が申告されていない点は確認できますが、それだけでバイアスがないとは限りません。小規模、単施設、非盲検、報告の不一致など、研究設計と報告品質は別に評価する必要があります。
日本での位置づけ|標準的なED治療ではない
この試験で使われた胎盤由来hPMSCの陰茎海綿体注射は、中国で実施された研究的介入です。2026年9月20日にPMDAと厚生労働省の公開情報を確認した範囲では、同じ胎盤由来hPMSC製剤に日本のED治療としての承認は確認できませんでした。
日本では、細胞加工物を用いる再生医療の提供には再生医療等安全性確保法に基づく手続きが必要です。厚生労働省は、再生医療の提供や特定細胞加工物の製造には事前手続きが必要だと案内しています。[6] ただし、提供計画が受理されていることと、医薬品医療機器等法に基づき有効性・安全性が承認された製品であることは同じではありません。
LI-ESWTについては、欧州泌尿器科学会の現行ガイドラインが、軽症の血管性ED、経口薬を望まない・使えない人、PDE5阻害薬への反応が不十分な血管性EDで弱く推奨しています。一方、改善は軽度で、装置やプロトコルのばらつきが大きいとも説明しています。[3]
日本性機能学会・日本泌尿器科学会の公開するED診療ガイドライン第3版は2018年版で、PDE5阻害薬を中心とした診療アルゴリズムを示しています。[4] 今回の2025年RCTは当然ながら収載されていません。
国内で承認されたシルデナフィルは、性行為のおよそ1時間前に必要時服用し、投与間隔を24時間以上あける用法です。[5] 幹細胞注射やLI-ESWTを検討する前に、診断、心血管リスク、糖尿病管理、PDE5阻害薬の禁忌と正しい使い方を確認することが先です。
薬の使い方はED治療薬を食後に飲んだら?、毎日服用と頓用の研究はタダラフィル毎日服用と頓用のメタ解析で詳しく解説しています。
糖尿病EDで現実的に優先すること
1. EDの原因を一つに決めつけない
糖尿病があっても、EDの原因がすべて糖尿病とは限りません。血管、神経、テストステロン、服薬、睡眠、心理状態、パートナーとの関係などを含めて評価します。
初診で行う問診や検査はEDの初診・検査ガイドを参照してください。
2. 心血管リスクを確認する
EDは、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満などと関連します。胸痛、息切れ、運動耐容能の低下がある場合は、性行為やED薬を始める前に循環器の評価が必要なことがあります。
3. 血糖・血圧・脂質を整える
血糖管理だけでEDが必ず治るわけではありませんが、糖尿病の合併症進行を抑えるために重要です。自己判断で治療薬を中止せず、糖尿病の主治医と相談してください。
運動・減量のエビデンスはEDは運動で改善する?で整理しています。
4. PDE5阻害薬の使い方を見直す
効かなかった理由が、食事、服用タイミング、性的刺激不足、用量、試行回数、併用薬にある場合があります。硝酸薬との併用は禁忌で、心血管状態によっては使用できません。
5. 研究的治療では「何が分かっていないか」を聞く
幹細胞治療や衝撃波治療を提案された場合は、少なくとも次を確認してください。
- 使用する細胞の由来と品質管理
- 日本での法的な手続きと承認状況
- 研究計画または提供計画の番号
- 期待できる効果の絶対値
- 効果がなかった場合の対応
- 短期と長期の有害事象
- 総費用と追加費用
- 標準治療との比較データ
- 有害事象が起きたときの補償と連絡先
「再生医療だから根本治療」「自分の細胞に近いから安全」「副作用がない」といった説明だけで判断しないことが大切です。
よくある質問
幹細胞+衝撃波治療で糖尿病EDは治りますか?
現時点では「治る」とは言えません。33人のRCTで一部の指標は改善しましたが、性交成功率に有意差はなく、プラセボ対照もなく、追跡は6か月です。大規模、多施設、盲検化した試験での再現が必要です。
33人RCTは信頼できますか?
無作為化比較という設計は長所です。しかし各群10〜11人と少なく、脱落記載の不一致、95%信頼区間の欠如、偽治療群なしなどの限界があります。「有望な初期データ」としては参考になりますが、治療の確立を示す証拠ではありません。
IIEF-EFが19.8点なら正常ですか?
IIEF-EFは一般に高いほど良好ですが、19.8点は集団平均であり、個人の正常化を意味しません。ベースラインからの変化、重症度、性交成功、本人の満足度も合わせて評価する必要があります。
重篤な副作用がなかったなら安全ですか?
33人を6か月追跡した範囲では重篤な有害事象は報告されませんでした。しかし、まれな感染、免疫反応、異常な組織増殖、長期的な有害事象を除外できる規模ではありません。局所疼痛の正確な人数も報告されていません。
衝撃波治療だけでも効果はありますか?
今回の試験ではLI-ESWT単独群でも一部の指標が改善しましたが、プラセボとの比較ではないため、治療そのものの効果量を確定できません。EAUガイドラインは一部の血管性EDで弱く推奨していますが、改善は軽度でプロトコルのばらつきがあります。[3]
日本で同じ治療を受けられますか?
「幹細胞治療」や「衝撃波治療」という名称が同じでも、細胞の由来、加工法、装置、照射条件が今回の試験と同一とは限りません。再生医療の提供手続きと、製品としての承認は別です。治療名だけで同等と判断せず、実施医療機関へ詳細を確認してください。
PDE5阻害薬が効かなければ幹細胞治療へ進むべきですか?
すぐに進む根拠はありません。服用方法、用量、試行回数、食事、性的刺激、テストステロン、糖尿病や心血管リスクなどを再評価します。専門医では、別のPDE5阻害薬、陰茎海綿体注射、陰圧式勃起補助具、心理的支援、手術なども含めて検討します。
まとめ
2025年の33人RCTでは、胎盤由来間葉系幹細胞とLI-ESWTの併用群で、IIEF-EF、EHS>2の割合、夜間の総勃起時間などが単独群より良好でした。
一方で、SEP-2とSEP-3という実際の性交成功に関する指標では有意差がなく、主要な群間差の95%信頼区間も報告されていません。33人、単施設、偽治療なし、6か月追跡、脱落記載の不一致という限界があります。
結論は、**「可能性はあるが、標準治療として勧められる証拠には達していない」**です。
糖尿病EDでは、まず原因評価、心血管リスク、血糖・血圧・脂質、PDE5阻害薬の正しい使用を確認します。研究的治療を検討する場合は、承認・提供手続き、細胞や機器の仕様、効果の絶対値、長期安全性、費用、補償まで具体的に確認してください。
参考文献・確認資料
- Ji YH, Zhang YF, Tan X, et al. High-activity placenta-derived mesenchymal stem cells combined with low-intensity extracorporeal shock wave therapy for diabetic erectile dysfunction: a prospective randomized controlled trial. Stem Cell Res Ther. 2025;16:359. PubMed Central全文(2026年9月20日確認)
- 同論文の書誌・抄録・利益相反・研究資金情報. PubMed PMID: 40629484(2026年9月20日確認)
- European Association of Urology. Sexual and Reproductive Health Guidelines: Management of Erectile Dysfunction. EAU公式ガイドライン(2026年9月20日確認)
- 日本性機能学会・日本泌尿器科学会. ED診療ガイドライン第3版. 学会公式ページ(2026年9月20日確認)
- PMDA. バイアグラ錠25mg・50mg 電子添文. PMDA公式PDF(2026年9月20日確認)
- 厚生労働省. 再生・細胞医療・遺伝子治療について. 厚生労働省公式ページ(2026年9月20日確認)
※本記事は研究結果の解説であり、診断や治療の代わりではありません。ED治療や糖尿病治療を自己判断で開始・中止せず、医師へ相談してください。