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ウゴービは心筋梗塞・脳卒中を減らす?17,604人のSELECT試験を解説

SELECT試験では、既存心血管疾患を持つ糖尿病のない過体重・肥満17,604人で、セマグルチド2.4mgが主要心血管イベントを6.5%対8.0%、HR 0.80に低下させました。結果の読み方と日本での位置づけを解説します。

医療ダイエット医師による医療情報レビュー済み公開日: 2026年9月4日更新日: 2026年9月4日公式情報確認日: 2026年9月4日

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目次

肥満症治療でセマグルチド(ウゴービ)を検討するとき、「体重が何kg減るか」だけでなく、「心筋梗塞や脳卒中のような重大な病気を減らせるのか」は重要な疑問です。

この問いに対して大規模な無作為化比較試験で検証したのがSELECT試験です。2023年にNew England Journal of Medicineで主要結果が報告され、糖尿病がなく、すでに心血管疾患を持つ過体重・肥満の成人17,604人を対象に、週1回セマグルチド2.4mgとプラセボが比較されました。

結論を先にまとめると、主要心血管イベントはセマグルチド群6.5%、プラセボ群8.0%で、ハザード比0.80(95%信頼区間0.72〜0.90、P<0.001)でした。つまり、この研究集団ではセマグルチド群で心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中の複合イベントが相対的に20%少なかったことになります。

ただし、これは「美容目的で数kg痩せたい健康な人にウゴービを使えば心筋梗塞を20%防げる」という意味ではありません。SELECT試験の対象者は45歳以上で、心筋梗塞・脳卒中・症候性末梢動脈疾患などの既往があり、BMI 27kg/m²以上という高リスク集団でした。日本のウゴービの肥満症適応にも条件があり、単なる美容目的の減量と、肥満症に対する承認治療は区別して考える必要があります。

この記事ではSELECT試験について、研究デザイン、対象、比較方法、効果量、95%信頼区間、P値、安全性、限界、利益相反、国内承認との関係まで順に整理します。

SELECT試験とは?

SELECTは、Semaglutide Effects on Cardiovascular Outcomes in People with Overweight or Obesityの略称です。

研究の目的は、糖尿病がない過体重・肥満の人でも、セマグルチド2.4mgによって重大な心血管イベントを減らせるかを検証することでした。

GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者を対象とした研究で心血管イベント低下が示されていました。しかし、糖尿病がない肥満・過体重の人について、体重減少だけではなく心筋梗塞や脳卒中といった臨床イベントを減らせるかは十分に分かっていませんでした。

SELECT試験はこの点を、大規模なイベント駆動型のランダム化比較試験として検証した研究です。

研究デザイン

研究は多施設共同、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、イベント駆動型の優越性試験です。

参加者は1対1で、

  • セマグルチド2.4mgを週1回皮下注射する群
  • プラセボを週1回皮下注射する群

に割り付けられました。

セマグルチドは最初から2.4mgを使用したわけではありません。0.24mgから開始し、4週間ごとに0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgへ増量する設計でした。実際の臨床でも消化器症状などを考慮して段階的に増量します。

主要評価項目は、次の3つを合わせたMACE(major adverse cardiovascular events)でした。

  • 心血管死
  • 非致死性心筋梗塞
  • 非致死性脳卒中

「最初にいずれかが起こるまでの時間」を比較する解析です。

誰が参加した研究?

SELECT試験には17,604人が登録されました。

セマグルチド群8,803人、プラセボ群8,801人です。

主な参加条件は、

  • 45歳以上
  • BMI 27kg/m²以上
  • 既存の心血管疾患がある
  • 糖尿病の既往がない

ことでした。

心血管疾患は、過去の心筋梗塞、過去の脳卒中、症候性末梢動脈疾患などで定義されています。

平均年齢は61.6歳、平均BMIは33.3kg/m²でした。男性は72.3%を占めていました。

この「男性が約7割」という点は、男性向け医療ダイエットを考えるうえで興味深いポイントです。ただし、男性だけを対象にした試験ではなく、性別ごとの治療判断を直接決める研究でもありません。

また、参加者の約3分の2はHbA1c 5.7〜6.4%の範囲にあり、いわゆる前糖尿病に相当する血糖状態でした。糖尿病そのものは除外されていますが、完全に代謝リスクの低い健康集団ではありません。

一番重要な結果:MACEは6.5%対8.0%

平均追跡期間は39.8か月でした。

主要心血管イベントは、

  • セマグルチド群:569人/8,803人、6.5%
  • プラセボ群:701人/8,801人、8.0%

に発生しました。

ハザード比は0.80、95%信頼区間0.72〜0.90、P<0.001です。

ハザード比0.80とは?

ハザード比0.80は、追跡期間全体を通したイベント発生の相対的な速さが、セマグルチド群でプラセボ群より20%低かったことを示します。

「100人中20人が助かった」という意味ではありません。

絶対リスクで見ると、約3.3年の追跡で6.5%対8.0%、差は1.5ポイントです。

このように、相対リスクと絶対リスクを分けて読むことが重要です。

95%信頼区間0.72〜0.90

95%信頼区間が1をまたいでいないため、統計学的にはセマグルチド群でイベントが少ない結果と整合します。

P値も0.001未満でした。

ただし、統計学的有意差があることと、すべての人に同じ程度の臨床的利益があることは同義ではありません。

もともとの心血管リスクが高い人ほど、同じ相対リスク低下でも絶対的な利益は大きくなる可能性があります。一方、心血管疾患のない若い低リスクの人にSELECTの数値をそのまま当てはめることはできません。

体重はどれくらい減った?

SELECT試験の主目的は心血管イベントですが、体重変化も評価されています。

主要報告では、セマグルチド群で体重、腹囲、血圧、炎症指標などが改善する方向が示されました。

後に発表された事前規定解析では、セマグルチド群の体重減少は長期にわたって維持されました。208週時点の平均体重変化はセマグルチド群で約-10.2%、プラセボ群で約-1.5%でした。

腹囲はセマグルチド群で平均約-7.7cm、プラセボ群で約-1.3cmでした。

ここで注意したいのは、STEP 1などの肥満症試験で報告された15%前後の平均減量と、SELECTの長期解析で約10%だったことを単純比較しないことです。

SELECT参加者は高齢で心血管疾患を持つ人が中心で、研究目的、背景、追跡期間、治療継続率などが異なります。

異なる試験同士の平均値だけを見て「SELECTでは効きが弱い」と判断するのは適切ではありません。

心血管イベントが減ったのは体重が落ちたから?

この点は重要ですが、SELECTだけから「体重減少が何%を占めた」と断定することはできません。

セマグルチド治療では、

  • 体重減少
  • 腹囲減少
  • 血圧低下
  • 血糖指標の改善
  • 脂質への影響
  • 炎症指標への影響

など複数の変化が同時に起こります。

主要論文では、群間差が比較的早期から現れたことから、体重減少の大きさだけでは説明できない生理学的作用が関与する可能性も議論されています。

GLP-1受容体作動薬には、血管内皮、炎症、動脈硬化性プラーク、血小板機能などへの作用が研究されています。

しかし、臨床的には「セマグルチドの心血管効果はすべて体重減少のおかげ」「体重が10%減れば同じ効果が出る」と置き換えるべきではありません。

SELECTが直接証明したのは、特定の高リスク集団でセマグルチド2.4mgを使用したときに、プラセボと比べてMACEが少なかったことです。

安全性はどうだった?

効果だけでなく、有害事象による中止率を見る必要があります。

試験薬を永久中止する原因となった有害事象は、

  • セマグルチド群:16.6%
  • プラセボ群:8.2%

で、セマグルチド群の方が多く、P<0.001でした。

GLP-1受容体作動薬では、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの消化器症状がよく問題になります。

一方、長期解析では重篤な有害事象全体はセマグルチド群で少ない傾向も報告されています。これは心血管イベントを含む基礎疾患関連のイベントが減る影響もあり得るため、「副作用が少ない薬」という単純な意味ではありません。

治療を選ぶときは、

  • 心血管リスク低下という利益
  • 体重減少の利益
  • 消化器症状
  • 胆嚢関連疾患などの注意点
  • 膵炎を疑う症状への対応
  • 脱水
  • 費用
  • 長期継続の負担

を個別に考える必要があります。

「有害事象で中止16.6%」をどう考える?

16.6%という数字を見ると高く感じるかもしれません。

しかし、臨床試験の「永久中止に至った有害事象」は、軽症から重症までさまざまな理由を含みます。

また、SELECTでは約3年以上の長期追跡が行われています。数週間だけ薬を使う短期試験とは、中止率の意味が異なります。

重要なのは、体重が減るかだけでなく「その治療を安全に継続できるか」です。

強い吐き気や嘔吐を我慢して高用量を続けることが良い治療とは限りません。承認された増量手順に従い、症状に応じて医師と相談する必要があります。

SELECT試験の強み

1.17,604人という大規模試験

肥満症治療薬の研究として非常に大規模です。

主要評価項目が体重だけではなく、心血管死、心筋梗塞、脳卒中という患者にとって重要な臨床イベントだったことも大きな特徴です。

2.二重盲検ランダム化比較試験

参加者と医療者が治療割付を知らない二重盲検で、プラセボ対照でした。

観察研究より交絡の影響を減らしやすい設計です。

3.追跡完了率が高い

試験を完了した、または死亡まで追跡できた参加者は96.9%で、生命状態は99.4%で把握されていました。

心血管アウトカム試験では追跡脱落が少ないことが結果の信頼性に関わります。

4.男性が多い

参加者の72.3%が男性でした。

男性向けの肥満症治療情報を考える際に参考になる点ですが、男性に特化した介入試験ではありません。

SELECT試験の限界

1.一次予防にはそのまま当てはめられない

参加者は全員、すでに心血管疾患を持つ人でした。

心筋梗塞も脳卒中も経験していない健康な肥満の人に、同じ20%相対リスク低下が得られるとは証明されていません。

「肥満なら将来の心筋梗塞予防のため全員ウゴービを使うべき」という結論ではありません。

2.若い美容目的の利用者とは背景が違う

平均年齢は61.6歳です。

20〜40代で、心血管疾患がなく、数kgの減量を目的に自由診療を受ける人とは集団が大きく異なります。

3.糖尿病の人は除外

SELECTは糖尿病のない人が対象です。

2型糖尿病がある人については、別のGLP-1受容体作動薬試験や糖尿病診療のエビデンスを参照する必要があります。

4.治療中止が一定数ある

セマグルチド群でも治療を予定より早く永久中止した参加者がいました。

長期間にわたって全員が2.4mgを継続できたわけではありません。

104週時点で目標2.4mgを使用していたのはセマグルチド群の約77%でした。

5.スポンサー企業による資金提供

SELECT試験はセマグルチドを製造するNovo Nordiskの資金提供で実施されました。

試験プロトコルはスポンサーと学術運営委員会が設計しています。

企業資金があるから研究結果が無効という意味ではありませんが、COIとして明示し、独立した追試や他研究との整合性も含めて読む必要があります。

COI・資金提供はどう見る?

医薬品の大規模心血管アウトカム試験は費用が非常に大きく、製薬企業がスポンサーになることは珍しくありません。

SELECTではNovo Nordiskが資金提供者です。

論文を読むときは、

  • 誰が資金提供したか
  • 試験設計にスポンサーが関与したか
  • データ解析や原稿作成への関与
  • 著者の企業との関係

を確認します。

一方で、17,604人を対象としたランダム化二重盲検試験で、主要イベントを事前に定め、95%信頼区間まで報告している点は、単なる企業広告とは異なります。

COIは「結果を無視する理由」ではなく、「研究の解釈で確認すべき情報」です。

日本のウゴービ承認とSELECT試験は同じ条件?

同じではありません。

日本ではウゴービ(セマグルチド)は肥満症に対して承認されていますが、使用できる対象には条件があります。

2026年9月4日時点のPMDA情報では、肥満症について、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、さらに次のいずれかに該当する場合が承認上の対象です。

  • BMI 27kg/m²以上で、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
  • BMI 35kg/m²以上

通常は0.25mgから開始し、4週間間隔で0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgの順に増量して、以後2.4mgを週1回投与します。

したがって、「BMI 27以上だから日本で誰でもウゴービを使える」わけではありません。

SELECTの組み入れ基準と、日本の承認適応は別々に確認する必要があります。

2026年にはMASH適応も追加

日本では2026年6月、ウゴービに肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の適応が追加されました。中等度または高度の線維化を有する場合に限るという条件があります。

これは肥満症適応とは別の承認です。

「ウゴービは痩せ薬だから肝臓にも良い」という単純な説明ではなく、対象疾患、線維化の程度、用量、適応を分けて考える必要があります。

オゼンピックとは何が違う?

ウゴービとオゼンピックは、どちらも有効成分はセマグルチドです。

しかし、日本での承認適応と製剤・用量は同じではありません。

オゼンピックは2型糖尿病治療薬です。

ウゴービは肥満症治療薬として承認され、さらに2026年には条件付きでMASH適応も追加されました。

「同じ成分だからオゼンピックを美容ダイエットに使えばSELECTと同じ心血管効果が得られる」とは言えません。

SELECTで検証されたのは、週1回セマグルチド2.4mgを用いた特定の研究条件です。

リベルサスでも同じ?

リベルサスもセマグルチドですが、経口製剤で、日本では2型糖尿病治療薬です。

投与経路も承認適応も用量も異なります。

SELECT試験の結果をリベルサスの美容目的使用にそのまま外挿することはできません。

「心血管イベント20%減」を広告文句だけで判断しない

医療ダイエットの広告で「心血管リスク20%低下」とだけ表示されると、非常に大きな効果に見えるかもしれません。

しかし、必ず次を確認してください。

  • 誰を対象にした研究か
  • 何と比較したか
  • 相対リスクか絶対リスクか
  • 追跡期間はどれくらいか
  • 日本の承認対象と一致するか

SELECTでは、約3.3年で8.0%から6.5%への低下でした。

この1.5ポイントの絶対差は、高リスクの二次予防集団で得られた数字です。

個人の利益は年齢、既往歴、心血管リスク、治療継続期間などで変わります。

NNTは単純に計算してよい?

粗いイベント割合から単純計算すると絶対差は1.5%なので、逆数は約67です。

しかし、SELECTの主要解析は時間-to-event解析でハザード比を用いています。

追跡期間も個人ごとに完全に同一ではありません。

そのため、「67人を治療すれば1人必ず救える」と断定するのは適切ではありません。

NNTを示す場合は、どの時点の累積発生率から計算したかを明確にする必要があります。

この記事では、分かりやすさのためイベント割合の絶対差1.5ポイントを示しますが、主要結果はHR 0.80(95%CI 0.72〜0.90)として理解するのが基本です。

男性に特に効くという結果なの?

SELECTでは参加者の72.3%が男性でしたが、「男性だからセマグルチドの心血管効果が大きい」と証明した研究ではありません。

大規模試験のサブグループ解析は、全体結果との一貫性を確認するために有用ですが、性別ごとの差を証明するには別の統計的検討が必要です。

男性向けサイトだからといって、男性に優位な効果が証明されたように表現すべきではありません。

一方、日本では中年男性に肥満、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸などが併存することがあります。

体重だけでなく血圧、脂質、血糖、既往歴を含めて治療適応を評価することが大切です。

体重だけを目標にしない理由

医療ダイエットでは「1か月で何kg」「BMIをいくつまで落とす」といった数字に目が向きがちです。

SELECTが示した重要な点は、肥満症治療の目的が体重計の数字だけではないことです。

肥満症の治療では、

  • 心血管疾患
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 糖代謝
  • 睡眠時無呼吸
  • 関節への負担
  • 脂肪性肝疾患

など、肥満に関連する健康障害を総合的に考えます。

外見の変化は治療を続ける動機になることがありますが、承認薬の適応判断は医学的な条件に基づきます。

自由診療でセマグルチドを使う場合の注意点

自由診療では、承認適応外の目的や用法でGLP-1系薬剤が処方されることがあります。

適応外使用が直ちに違法・不適切という意味ではありませんが、承認された肥満症治療と同じエビデンスがそのまま適用できるとは限りません。

確認したいのは、

  • 製品名
  • 有効成分
  • 国内承認の有無
  • 何の適応で処方されるか
  • 用量
  • 増量方法
  • 副作用時の連絡先
  • 採血や診察のフォロー
  • 費用
  • 中止後の方針

です。

「GLP-1なら何でも同じ」と考えないことが重要です。

オンラインで医療ダイエットを相談したい人へ

レバクリではメディカルダイエットのオンライン診療を案内しています。薬剤名、国内承認適応、用量、副作用、費用を確認したうえで相談してください。

どんな人は自己判断で使わない方がよい?

肥満症治療薬は、ネットで購入して自己判断で増減する薬ではありません。

特に、

  • 強い腹痛がある
  • 繰り返す嘔吐がある
  • 脱水が疑われる
  • 胆石・胆嚢炎の既往がある
  • 膵炎の既往や疑いがある
  • 糖尿病治療薬を併用している
  • 妊娠中または妊娠を希望している
  • 大きな手術や麻酔を予定している

場合などは、処方医へ必ず情報を伝える必要があります。

個別の禁忌・慎重投与・併用上の注意は最新の電子添文を確認してください。

SELECT試験から分かること、分からないこと

分かること

糖尿病がなく、BMI 27kg/m²以上で、すでに心血管疾患を持つ45歳以上の成人では、セマグルチド2.4mg週1回はプラセボと比較して主要心血管イベントを減らしました。

主要イベントは6.5%対8.0%、HR 0.80、95%CI 0.72〜0.90、P<0.001でした。

分からないこと

心血管疾患のない若い健康な人に同じ利益があるかは分かりません。

美容目的で正常体重の人に使った場合の利益を示した試験でもありません。

オゼンピックやリベルサスの適応外ダイエットで同じ結果が得られると証明した研究でもありません。

また、治療をやめた後も同じ心血管保護効果が続くかを、この主要結果だけから断定することはできません。

他の肥満症治療薬にも同じ効果がある?

SELECTはセマグルチド2.4mgの試験です。

チルゼパチドなど他の薬剤で体重減少が大きいからといって、SELECTの心血管イベント減少率をそのまま当てはめることはできません。

薬剤ごとに、

  • 受容体作用
  • 臨床試験
  • 対象患者
  • 評価項目
  • 承認適応

が異なります。

「体重がより減る薬=必ず心筋梗塞をより減らす薬」ではありません。

心血管アウトカムは、心血管アウトカムを評価した試験で判断する必要があります。

治療を始める前に確認したいこと

ウゴービを含む肥満症治療を考えるなら、体重だけでなく次を確認するとよいでしょう。

  1. BMI
  2. 高血圧の有無
  3. 脂質異常症の有無
  4. 2型糖尿病・前糖尿病の有無
  5. 睡眠時無呼吸など肥満関連健康障害
  6. 心筋梗塞・脳卒中・末梢動脈疾患の既往
  7. 胆石・胆嚢炎の既往
  8. 膵炎を疑う既往
  9. 現在の薬
  10. 食事・運動療法の実施状況

承認薬を使う場合でも、薬だけで肥満症管理が完結するわけではありません。

よくある質問

ウゴービで心筋梗塞が20%減るのですか?

SELECTでは、主要心血管イベントのハザード比が0.80で、相対的に20%低い結果でした。ただし対象は心血管疾患をすでに持つ45歳以上の過体重・肥満者です。誰にでも20%の利益があるという意味ではありません。

絶対リスクはどれくらい違いましたか?

主要イベントはセマグルチド群6.5%、プラセボ群8.0%で、粗い割合の差は1.5ポイントでした。主要解析は時間-to-event解析なので、単純な割合だけで治療効果を判断しないことが重要です。

糖尿病がなくても効果があったのですか?

はい。SELECTは糖尿病の既往がない人を対象にした試験です。ただし、約3分の2はHbA1cが前糖尿病範囲でした。

健康な20代・30代のダイエットにも当てはまりますか?

そのままは当てはまりません。平均年齢は61.6歳で、全員が既存の心血管疾患を持っていました。

男性に特に効果がありますか?

参加者の72.3%は男性でしたが、男性に特に大きな効果があると証明した試験ではありません。

体重は何%減りましたか?

長期解析では208週時点で平均約10.2%減でした。プラセボ群は約1.5%減でした。別の肥満症試験とは対象集団が異なるため単純比較はできません。

副作用でやめた人はいましたか?

有害事象による永久中止はセマグルチド群16.6%、プラセボ群8.2%でした。消化器症状などの忍容性も治療継続を考えるうえで重要です。

日本でBMI 27以上ならウゴービを使えますか?

BMIだけでは決まりません。日本の肥満症適応には、肥満関連健康障害や高血圧・脂質異常症・2型糖尿病、食事・運動療法などの条件があります。最新の電子添文と最適使用推進ガイドラインを確認してください。

オゼンピックでもSELECTと同じですか?

同じとは言えません。有効成分は同じセマグルチドですが、日本の承認適応、製剤、用量が異なります。SELECTは週1回2.4mgのセマグルチドを検証しました。

リベルサスでも同じですか?

同じとは言えません。リベルサスは経口セマグルチドで、日本では2型糖尿病治療薬です。

ゼップバウンドにも20%の心血管イベント低下がありますか?

SELECTの20%という数値をゼップバウンドに置き換えることはできません。薬剤ごとの心血管アウトカム試験で評価する必要があります。

関連記事

治療中止後の体重変化はGLP-1をやめるとリバウンドする?で、セマグルチドとチルゼパチドの減量効果・適応の違いはゼップバウンドとウゴービはどっちが痩せる?で詳しく解説しています。心血管アウトカムと体重減少率は別の評価軸なので、目的に応じて読み分けてください。

まとめ|SELECTは「痩せる薬」から「健康アウトカム」へ視点を広げた試験

SELECT試験では、糖尿病がなく、既存の心血管疾患を持つ過体重・肥満の17,604人を対象に、週1回セマグルチド2.4mgとプラセボが比較されました。

主要心血管イベントは6.5%対8.0%、ハザード比0.80(95%CI 0.72〜0.90、P<0.001)で、セマグルチド群が有意に少ない結果でした。

一方、有害事象による永久中止は16.6%対8.2%で、セマグルチド群の方が多くなりました。

この結果は、肥満症治療が単なる「見た目の減量」ではなく、適切な高リスク患者では重大な健康アウトカムに関係し得ることを示した重要なエビデンスです。

ただし、SELECTの結果を、心血管疾患のない若い人や美容目的の適応外使用へそのまま広げることはできません。

日本でウゴービを使用する場合は、国内の承認条件、電子添文、最適使用推進ガイドラインに沿って適応を確認し、体重だけでなく併存疾患と安全性を含めて治療を考えることが重要です。

参考文献・確認資料

  1. Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389:2221-2232. DOI:10.1056/NEJMoa2307563.
  2. Ryan DH, et al. Long-term weight loss effects of semaglutide in obesity without diabetes in the SELECT trial. Nat Med. 2024. PMID:38740993.
  3. PMDA. ウゴービ皮下注 医療用医薬品情報・電子添文. 2026年6月19日改訂版を2026年9月4日確認.
  4. ノボ ノルディスク ファーマ. ウゴービのMASH適応追加に関する2026年6月19日公表情報. 2026年9月4日確認.

医薬品の効能・効果、用法・用量、安全性情報は改訂される可能性があります。実際の診療では最新の電子添文・公式情報と医師の判断を優先してください。