地域
メンズ美容皮膚科

エラボトックスは顔幅をどれくらい減らす?376人の第III相RCTを解説

咬筋膨隆に対するonabotulinumtoxinA 72単位の第III相RCTを全文検証。改善率、顔幅の変化、男性への適用限界、有害事象、日本の承認内容を整理します。

メンズ美容皮膚科医師による医療情報レビュー済み公開日: 2026年10月16日更新日: 2026年10月16日公式情報確認日: 2026年10月16日

この記事は医学論文・エビデンス解説です。論文解説一覧を見る →

PR本ページには広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。
目次▾

エラの張りが気になるとき、原因が咬筋の膨隆であればA型ボツリヌス毒素による治療が選択肢になります。ただし、顔の横幅は骨格、皮下脂肪、皮膚のたるみなどにも左右されます。「エラボトックスを打てば誰でも小顔になる」「多い単位ほど効果が高い」とは言えません。

この記事では、咬筋膨隆に対するonabotulinumtoxinA(オナボツリヌストキシンA)72単位を検討した2026年の多地域第III相試験を、原著全文に基づいて解説します。中心となる論文は、Sunらの原著全文(PMC)です。[1]

結論を先にまとめると、90日後に医師評価で咬筋の目立ち方が2段階以上改善した割合は、実薬群51.2%、プラセボ群2.2%でした。画像で測った下顔面幅の平均変化は実薬群−5.24 mm、プラセボ群−0.04 mmで、差は統計学的に有意でした。一方、試験参加者の88.1%は女性で、男性は44人です。男性だけの効果量を確定する試験ではありません。

また、治療関連有害事象は実薬群の12.0%で報告され、咀嚼障害3.5%、注射部位痛2.8%、奇異性咬筋膨隆2.1%などが含まれました。研究は製造販売企業の資金提供を受け、設計、解析、データ解釈、論文承認にも企業が関与しています。効果の数字と同時に、対象の偏り、安全性、利益相反を読む必要があります。

目的別の承認範囲、他院での注射歴、妊活、再投与間隔、しわ・脇汗との違いを先に整理したい方は、男性のボトックス治療ガイドも確認してください。

研究の要点

項目内容
研究デザイン多施設共同、第III相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照
実施地域中国・カナダ・台湾の21施設
対象医師評価・本人評価ともに両側の咬筋膨隆がGrade 4または5の成人
治療onabotulinumtoxinA 72単位を左右の咬筋へ計6か所、またはプラセボ
割付実薬3:プラセボ1
治療人数376人(実薬283人、プラセボ93人)
性別mITT集団370人中、女性326人、男性44人
主要評価90日後に医師評価MMPSが2段階以上改善した割合
主な結果51.2%対2.2%、P<0.0001
顔幅の平均変化−5.24 mm対−0.04 mm、P<0.0001
二重盲検期間180日
資金提供Allergan Aesthetics(AbbVie)

数字は集団平均であり、個人の仕上がりを保証するものではありません。試験は「下顔面が広く見える人全般」ではなく、咬筋膨隆が明確な人を選んでいます。

咬筋膨隆と骨格によるエラ張りは同じではない

咬筋は、食べ物を噛むときに働く筋肉です。歯を強く噛みしめたときに下顎角の前方で膨らみます。咬筋が発達して下顔面が四角く見える状態が咬筋膨隆です。

一方、下顔面の幅には下顎骨の形、頬やフェイスラインの脂肪、皮膚のたるみ、耳下腺周囲の組織なども関係します。筋肉以外が主因なら、咬筋の働きを弱めても希望する変化が得られないことがあります。

この第III相試験では、医師が視診と触診を行い、安静時と噛みしめ時を含めてMasseter Muscle Prominence Scale(MMPS)で評価しました。対象は5段階中4または5、つまり「marked(顕著)」または「very marked(非常に顕著)」の両側性咬筋膨隆です。軽度の張りや骨格性の幅に同じ効果量を当てはめることはできません。

食いしばりや歯ぎしりの治療効果を調べた試験ではない

この試験の目的は、下顔面の見た目と咬筋の目立ち方を評価することです。歯ぎしり、顎関節症、歯の摩耗、睡眠時ブラキシズムの治療効果を主要評価にした研究ではありません。

朝の顎疲労、歯の欠け、開口時の痛み、顎関節の音などが主な悩みなら、美容的な輪郭評価とは別に歯科・口腔外科で原因を確認する必要があります。「エラへの注射で歯ぎしりも必ず治る」と読み替えないでください。

研究デザインを詳しく見る

試験は2019年8月から2022年11月まで、中国、カナダ、台湾の21施設で実施されました。全体は18か月の試験ですが、今回の論文で中心に報告されたのは、初回治療から180日までの無作為化二重盲検プラセボ対照期間です。[1]

参加者は実薬群とプラセボ群に3対1で割り付けられました。実薬群ではonabotulinumtoxinA合計72単位を、左右の咬筋に各3か所、1か所12単位ずつ注射しました。評価者と参加者は治療内容を知らされない二重盲検でした。

参加条件

主な条件は次のとおりです。

  • 18歳以上
  • 左右ともに医師評価MMPSがGrade 4または5
  • 本人評価MMPS-PもGrade 4または5
  • 研究期間中の体重を基準値の±10%以内に保つ
  • 噛む機能や咬筋評価を妨げる病気・治療歴がない
  • 過去に咬筋または下顔面へボツリヌス毒素治療を受けていない
  • 他部位のボツリヌス毒素治療から6か月以上経過している

体重変動を制限したのは、痩せたことによる顔幅の変化を薬の効果と誤認しにくくするためです。見た目の研究では、照明、表情、姿勢、体重が結果へ影響します。この試験は規格化した3D画像も用いており、単なる症例写真比較より客観性を高めています。

主要評価項目

主要評価項目は90日後に医師評価MMPSが基準値から2段階以上改善した参加者の割合です。Grade 5から3、またはGrade 4から2などの変化が該当します。

1段階改善ではなく2段階改善を主要評価にした点は、見た目の変化をある程度明確に捉える設計です。ただしMMPSは咬筋の目立ち方を評価する尺度であり、美しさや満足度そのものではありません。

副次評価項目

副次評価には、医師評価MMPSがGrade 3以下になった割合、本人評価MMPS-Pが2段階以上改善した割合、本人評価がGrade 3以下になった割合、3D画像による下顔面幅の変化、少なくとも「少し改善した」と本人が答えた割合などが含まれました。

さらに、治療満足度、下顔面の見た目に関する心理社会的影響、見た目への困り感も、検証された患者報告アウトカムで評価されました。医師の見た目評価だけでなく、本人にとって意味のある変化を測ろうとした点は長所です。

90日後の主要結果

治療を受けた376人の内訳は、実薬283人、プラセボ93人でした。主要解析に用いられたmITT集団は370人です。

90日後にMMPSが2段階以上改善した割合は次のとおりでした。

  • onabotulinumtoxinA 72単位:51.2%
  • プラセボ:2.2%
  • P<0.0001

絶対差は49.0ポイントです。試験条件下では、プラセボより実薬で明確に改善者が多かったと解釈できます。

一方、実薬群でも約半数は主要評価の「2段階以上改善」に到達していません。これは無効が半数という単純な意味ではなく、1段階改善した人や別の評価では改善した人も含まれます。しかし、「72単位ならほぼ全員が明確に細くなる」という説明とは一致しません。

Grade 3以下になった割合

90日後に医師評価MMPSがGrade 3以下、つまり中等度以下になった割合は、実薬群81.1%、プラセボ群9.9%でした。本人評価MMPS-PがGrade 3以下になった割合は76.2%対19.5%でした。どちらもP<0.0001です。

本人評価で2段階以上改善した割合は、実薬群58.8%、プラセボ群9.1%でした。医師評価と本人評価の方向性は一致していますが、割合は同じではありません。写真上の幅が減っても満足度が高くない人や、数値変化が小さくても本人が改善を感じる人がいます。

顔幅は平均で何mm減ったのか

規格化した3D画像で下顔面幅を測定したところ、90日後の基準値からの平均変化は次のとおりでした。

  • onabotulinumtoxinA 72単位:−5.24 mm
  • プラセボ:−0.04 mm
  • P<0.0001

この幅は、上下の唇が接する中央点であるstomionの高さで測定されています。一般的な写真アプリの顔幅や、下顎角の骨幅を直接測った数字ではありません。

また、−5.24 mmは左右それぞれ5.24 mmずつ狭くなったという意味ではなく、測定された下顔面の全幅の平均変化です。個人差や分布は平均値だけでは分かりません。

統計学的有意差と「理想の輪郭」は別

P<0.0001は、プラセボとの差が偶然だけでは説明しにくいことを示します。しかし、5 mm前後の変化を本人が十分と感じるか、自然と感じるかは、元の顔幅、骨格、希望、撮影条件で変わります。

試験参加者は咬筋膨隆が顕著な人です。咬筋がそれほど発達していない人では、同じ平均変化を期待できません。逆に変化を強く求めすぎると、噛む機能や頬のこけ感とのバランスが問題になります。

効果はいつ出て、どのくらい続いたのか

医師評価と本人評価では、治療後30日という最初の評価時点から実薬群がプラセボ群を上回り、その差は180日まで維持されました。客観的な顔幅と医師評価の変化は90日前後で最大になり、本人評価のピークはやや遅い120日でした。[1]

これは、注射直後に完成形が分かる治療ではないことを示します。数日で噛み疲れなどの変化を感じても、輪郭変化の評価は急がないほうが合理的です。

一方、「180日まで差があった」は、全員が6か月間同じ効果を維持したという意味ではありません。時間とともに効果は弱まり、再投与の判断は個別です。国内電子添文では3か月以内の再投与を避けるよう示されています。[2]

本人が感じた変化と満足度

90日後に「少なくとも少し改善した」と回答した割合は、実薬群90.8%、プラセボ群20.4%でした。180日でも実薬群の回答率は80%を超え、プラセボ群より高い状態でした。

しかし、「満足」または「非常に満足」と回答した割合は、90日後で実薬群53.9%、プラセボ群4.5%です。改善を感じた割合より満足度が低い点は重要です。

論文著者は、一部の参加者が1回の72単位治療で得られた以上の劇的変化を望んでいた可能性を指摘しています。期待値が高すぎると、客観的な変化があっても不満につながります。

カウンセリングでは「何mm細くしたい」だけでなく、筋肉に由来する部分、骨格として残る部分、自然な表情と咀嚼をどの程度保ちたいかを共有する必要があります。

有害事象を数字で確認する

二重盲検期間中に少なくとも1件の治療後有害事象が報告された割合は、実薬群44.5%、プラセボ群35.5%でした。風邪や上気道感染など、治療との因果関係がない可能性のある出来事も含む数字です。

治療関連と判断された有害事象は、実薬群12.0%、プラセボ群3.2%でした。

治療関連有害事象実薬群プラセボ群
咀嚼障害3.5%0%
注射部位痛2.8%2.2%
注射部位不快感2.5%0%
奇異性咬筋膨隆2.1%0%
注射部位筋力低下1.4%0%
顔面不全麻痺0.7%0%

咀嚼障害には、咬筋・顎の疲労、痛み、噛む力の弱さが含まれました。治療関連有害事象は概ね軽度で、自然に回復しました。

奇異性咬筋膨隆とは

奇異性咬筋膨隆は、咬筋の一部だけが治療に反応し、噛みしめたときに別の部分が盛り上がって見える状態です。試験では実薬群の2.1%で報告され、1人はこれを理由に中止しました。

国内電子添文でも、注射位置を咬筋内で適切に定め、深層と表層へ均等に分布させることが示されています。自己注射や無資格者による施術は論外であり、顔面解剖と製剤特性を理解した医師による評価が必要です。[2]

毒素の遠隔拡散が疑われた症状

研究では、実薬群8人、プラセボ群1人に「毒素の遠隔拡散の可能性」が疑われる症状が報告されました。実薬群では顔面不全麻痺2人のほか、調節障害、Bell麻痺、徐脈、口渇、呼吸困難、筋力低下が各1人でした。

これらはすべて軽度で、介入を必要とせず回復し、医学的な判定では局所イベントまたは毒素と無関係とされました。ただし、だから重篤な影響が起こらないと断定はできません。

国内電子添文は、ボツリヌス毒素が投与筋以外へ影響したと考えられる嚥下障害、肺炎、重度の衰弱などを警告しています。呼吸しにくい、飲み込みにくい、声が変わる、全身が強く脱力するといった症状は、効果の一部として我慢せず、直ちに施術医へ連絡し、緊急性があれば救急受診してください。[2]

男性にどこまで当てはめられるか

mITT集団370人のうち、女性326人、男性44人で、男性は11.9%でした。論文には43歳男性の症例写真も掲載されていますが、男女別の主要評価結果や男性だけの顔幅変化は示されていません。

したがって、試験が男性を含むことは確認できますが、「男性でも51.2%」「男性は平均5.24 mm減る」とは言えません。男性は平均的に咬筋量や下顔面骨格が異なる可能性があり、希望する輪郭も一様ではありません。

また、参加者の87.3%はアジア人、82.4%は中国人でした。日本人の顔貌や診療へ一定の参考にはなりますが、日本人男性を対象にした試験ではありません。

男性が診察で確認したい点

  • 安静時と噛みしめ時に咬筋がどの程度膨らむか
  • 骨格、脂肪、たるみの寄与はどの程度か
  • 正面・斜め・側面のどの印象を変えたいか
  • 噛む力や顎疲労に職業・食生活上の懸念がないか
  • 過去のボツリヌス毒素製剤名、部位、単位、投与日
  • 妊活予定やパートナーの妊娠計画
  • 希望する変化と、残したい男性的な輪郭

表情じわ、ヒアルロン酸、HIFU、RF、糸リフトとは作用する組織が異なります。下顔面の悩みを施術名ではなく原因別に整理したい場合は、男性の顔のたるみ治療ガイドも参考になります。

研究の限界

1. 女性とアジア人が大半

参加者の88.1%が女性、87.3%がアジア人でした。男性、非アジア人、高齢者に同じ効果量が得られるかは別に検討が必要です。

2. 対象は顕著な両側咬筋膨隆

軽度の咬筋膨隆、片側のみの張り、骨格や脂肪が主因の人は研究対象と異なります。

3. 初回72単位とプラセボの比較

この論文の二重盲検結果は、onabotulinumtoxinA 72単位を1回投与した条件です。48単位との直接比較、他製剤との単位換算、長期の反復投与を決める研究ではありません。

4. 13.8%が途中で試験を離脱

参加者52人、13.8%が試験を中止しています。参加者都合や新型コロナウイルス関連の影響を含みますが、脱落は結果の解釈に影響し得ます。欠測値には多重代入法が用いられました。

5. 企業資金による試験

研究はAllergan Aesthetics(AbbVie)が資金提供し、試験設計、研究、解析、データ収集、解釈、論文のレビューと承認に関与しました。著者の一部は同社の社員または株式保有者で、他の著者にも治験責任医師、講演、コンサルタントなどの関係があります。

企業関与だけで研究を否定する必要はありませんが、独立した追試、実臨床データ、長期反復投与の安全性も合わせて見るべきです。

2024年の小規模RCTが示した機能面の注意

別の無作為化三重盲検試験では、咬筋膨隆を訴える女性26人全員へabobotulinumtoxinAを両側に投与し、3か月後の再投与を実薬または生理食塩水へ割り付けました。22人が完了し、6か月時点では再投与群で一部の筋厚・筋活動に差がみられ、機能面への影響が示唆されました。[3]

この試験は製剤、単位、対象、設計が第III相試験と異なります。単位は製剤間で換算できないため、75単位と72単位を数字だけで比較できません。

それでも、短い間隔で繰り返せば見た目の効果が単純に上乗せされるとは限らず、咀嚼筋機能や側頭筋への影響を考える必要があるという注意材料になります。

日本での承認内容

2026年8月改訂のPMDA電子添文では、ボトックスビスタ注用50単位・100単位に「65歳未満の成人における咬筋膨隆」が承認されています。通常はonabotulinumtoxinAとして左右合計48〜72単位を、左右の咬筋へ各3か所、合計6か所に分けて筋肉内注射します。1回の最大量は72単位で、再投与する場合も3か月以内は避けます。[2]

これは、本稿の第III相試験で使われた72単位が国内の承認範囲に含まれることを意味します。ただし、試験で使われた量が全員に最適という意味ではありません。国内電子添文は48〜72単位の範囲を示しており、医師が診断と個別条件に基づいて判断します。

承認されたのは製品・目的・用法の組み合わせ

「エラボトックスが承認された」という表現だけでは不十分です。確認するのは次の組み合わせです。

  • 製品名:ボトックスビスタ
  • 有効成分:A型ボツリヌス毒素(onabotulinumtoxinA)
  • 対象:65歳未満の成人の咬筋膨隆
  • 用量:左右合計48〜72単位
  • 注射部位:左右各3か所、合計6か所
  • 再投与:3か月以内を避ける

他のボツリヌス毒素製剤の単位へは換算できません。別製剤を72単位使うことが同じ治療にはなりません。

日本人男性への注意

国内承認があることは、日本で有効性と安全性が審査されたことを示します。一方、個別の日本人男性の結果を保証しません。

電子添文には、男性は投与中および最終投与後少なくとも3か月は避妊するよう記載されています。妊活中または妊活予定がある場合は、美容目的であっても治療前に医師へ申告してください。[2]

受診前のチェックリスト

診断と期待値

  • 咬筋膨隆が主因か、骨格・脂肪・たるみが主因か
  • 力を抜いた状態と噛みしめ時の左右差
  • 何をもって成功とするか
  • 骨格として残る幅を理解しているか

製剤と投与履歴

  • 製品名と国内承認の有無
  • 左右合計量と各部位数
  • 前回の製剤名、部位、日付、反応
  • 他院・歯科・美容院でのボツリヌス毒素歴
  • 他製剤の単位と換算できないこと

安全性

  • 神経筋疾患、嚥下障害、呼吸器疾患の既往
  • 筋弛緩作用を強める薬の使用
  • 妊娠・授乳・妊活予定
  • 噛みにくさ、口元の左右差、局所膨隆が起きた場合の連絡先
  • 緊急時の診察・紹介体制

費用

  • 表示価格が片側か左右合計か
  • 製剤名と総単位数
  • 診察料、再診料、麻酔、針、追加投与の費用
  • 効果判定の再診時期
  • コース契約の総額、解約・返金条件

料金の安さだけでなく、原因診断、製剤の確認、記録、合併症対応を含めて比較してください。無関係な施術とのセット契約を急ぐ必要はありません。

よくある質問

72単位なら必ず顔幅が5.24 mm減りますか?

いいえ。5.24 mmは試験参加者の平均変化です。対象は顕著な両側咬筋膨隆がある人で、個人差があります。骨格や脂肪が主因なら変化は小さくなる可能性があります。

男性も同じ改善率ですか?

分かりません。試験には男性44人が含まれましたが、男性だけの主要評価結果は示されていません。全体の51.2%や平均−5.24 mmを男性へそのまま当てはめられません。

効果はいつが最大ですか?

試験では医師評価と顔幅の変化が90日前後で最大でした。30日から差が確認され、180日まで実薬群がプラセボ群を上回りました。個人の経過は異なります。

噛みにくくなるのは普通ですか?

治療関連の咀嚼障害は実薬群の3.5%で報告されました。軽度で回復した例が中心ですが、効果の証拠として我慢する症状ではありません。食事に支障がある、悪化する、飲み込みにくい場合は施術医へ連絡してください。

歯ぎしりにも効きますか?

この第III相試験は美容的な咬筋膨隆の見た目を評価したもので、歯ぎしり治療の有効性を検証した試験ではありません。歯の摩耗や顎関節症状があれば歯科評価が必要です。

骨格性のエラにも効きますか?

ボツリヌス毒素は骨を小さくする治療ではありません。噛みしめたときの筋膨隆が少ない場合、期待する変化が得にくい可能性があります。

別の製剤でも72単位なら同じですか?

同じではありません。製剤ごとに単位の測定法と力価が異なり、換算できません。製品名、承認適応、用量をセットで確認してください。

まとめ

376人を対象とした多地域第III相試験では、onabotulinumtoxinA 72単位はプラセボと比べて、90日後の咬筋膨隆評価と下顔面幅を有意に改善しました。医師評価で2段階以上改善した割合は51.2%対2.2%、顔幅の平均変化は−5.24 mm対−0.04 mmでした。

一方、男性は44人に限られ、男女別の主要効果は示されていません。治療関連有害事象は12.0%で、咀嚼障害、注射部位痛、奇異性咬筋膨隆、顔面不全麻痺などが報告されました。企業資金による試験である点も含め、数字を過度に一般化しないことが重要です。

日本では2026年8月に咬筋膨隆がボトックスビスタの承認適応となり、65歳未満の成人に左右合計48〜72単位、3か月以内の再投与を避ける用法が示されています。診察では咬筋の寄与、骨格や脂肪、希望する輪郭、噛む機能、製剤名、過去の投与歴、妊活予定を確認してください。

エラだけでなく、眉間・目尻・脇汗を含めた製剤と承認範囲の違いは男性のボトックス治療ガイド、他の美容皮膚科施術との位置づけは男性の美容皮膚科完全ガイドで整理できます。

参考文献・確認資料

  1. Sun J, Wang L, Wu Y, Humphrey S, Chen SG, McGillivray W, Huang SH, Zhang Y, Pan G, Foley C, Lee E, Chang-Lin JE, Faletto DL, Patel V, Bowen B, Brin MF. “OnabotulinumtoxinA Treatment for Masseter Muscle Prominence: 6-Month Safety and Efficacy Results, Including Patient-Reported Outcomes, From a Phase 3, Randomized, Placebo-Controlled, Multiregional Trial.” Aesthetic Surgery Journal. 2026;46(5):486-494. DOI: 10.1093/asj/sjaf204. PMID: 41092464. PMCID: PMC13064654. 原著全文(PMC) / PubMed / DOI
  2. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ボトックスビスタ注用50単位/100単位 電子添文」2026年8月改訂(第4版、2026年10月16日確認)。PMDA電子添文PDF
  3. de Souza Nobre BBS, Rezende L, Câmara-Souza MB, et al. “Exploring botulinum toxin's impact on masseter hypertrophy: a randomized, triple-blinded clinical trial.” Scientific Reports. 2024;14:14522. DOI: 10.1038/s41598-024-65395-5. PMID: 38914688. PMCID: PMC11196657. 原著全文(PMC)

※本稿は主対象論文と補助論文の全文、PMDA電子添文を確認して作成しています。個別の診断・治療指示ではありません。

関連記事