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眉間の縦じわは、男性でも相談が多い表情じわのひとつです。美容医療ではA型ボツリヌス毒素製剤を皺眉筋や鼻根筋へ注射し、筋収縮を一時的に弱めることで目立ちにくくする治療が広く行われています。
一方で、「何単位なら効くのか」「男性は女性より多く必要なのか」「製剤ごとの単位は同じなのか」「効き始めや持続期間はどのくらいか」といった点は、広告や体験談だけでは判断しにくい部分です。とくに男性は眉間の筋量が大きいことがあり、女性中心の試験結果をそのまま当てはめると、過不足のある説明になりやすい点に注意が必要です。
この記事では、眉間の表情じわに対するA型ボツリヌス毒素について、無作為化比較試験(RCT)を中心に、効果、持続、安全性、男性での違い、日本の承認内容まで整理します。中心に扱うのは、20単位のonabotulinumtoxinAと他製剤を比較したRCT、男女を含む発現時期・持続期間の比較試験、300人規模の第III相比較試験、PMDAのボトックスビスタ資料です。
結論を先にまとめると、眉間の中等度〜重度の表情じわに対してA型ボツリヌス毒素はRCTで高い改善率を示しています。ただし、製剤ごとの「単位」は共通の物差しではなく、20単位と20単位を機械的に同じ強さとして扱えない製剤があります。また、男性では女性より効果発現が遅い可能性を示す比較試験があり、筋量や眉位置を含む個人差を踏まえた設計が重要です。
眉間じわにボツリヌストキシンが効く仕組み
眉間の縦じわは、主に皺眉筋、鼻根筋などの収縮で生じます。怒った表情やまぶしさで眉を内下方へ寄せる動きが繰り返されると、動かしたときだけ見える表情じわから、無表情でも残る静的なしわへ移行していくことがあります。
A型ボツリヌス毒素は神経筋接合部でアセチルコリン放出を抑え、標的筋の収縮を一時的に弱めます。皮膚そのものを埋めるヒアルロン酸とは作用機序が異なり、表情筋の過剰な収縮を弱める治療です。
そのため、表情を作ったときに深くなる眉間じわほど理論上は反応しやすく、無表情でも深く刻まれたしわでは、筋収縮を弱めても完全には消えないことがあります。
日本で承認されている眉間治療の位置づけ
日本ではボトックスビスタ注用50単位が、65歳未満の成人における眉間または目尻の表情じわに承認されています。
PMDAの再審査資料では、眉間の表情じわに対して合計10〜20単位を、左右の皺眉筋に各2部位、鼻根筋に1部位、合計5部位へ分割して筋肉内注射するとされています。症状が再発した場合は再投与できますが、3か月以内の再投与は避けることが示されています。
ここで重要なのは、日本の承認用量が「通常10〜20単位」であることです。海外の論文で20単位が多く使われていても、日本で全員に20単位が必須という意味ではありません。
また、眉間治療では眼瞼下垂を避けるため、上眼瞼挙筋周囲への拡散を避けることが重要です。PMDA資料でも、皺眉筋への投与位置について眼窩上縁との距離に注意する記載があります。
20単位のonabotulinumtoxinAはどの程度効くのか
眉間じわに対するRCTでは、20単位のonabotulinumtoxinAが比較薬として頻繁に使われています。
2012年に報告された多施設無作為化二重盲検試験では、中等度〜重度の眉間じわを持つ224人が、onabotulinumtoxinA 20単位群とincobotulinumtoxinA 30単位群へ割り付けられました。
主要評価項目は、28日後に最大収縮時のFacial Wrinkle Scaleが1段階以上改善した割合です。結果はonabotulinumtoxinA群96%、incobotulinumtoxinA群95%で、群間差は0.02、95%信頼区間は-0.04〜0.07でした。
この結果からは、試験で設定された20対30単位という条件では、28日後の改善率が非常に近かったと解釈できます。
ただし、「20単位と30単位が同じだから、単位換算は常に2対3」と一般化することはできません。製剤ごとの生物学的活性測定法、製造工程、拡散特性などが異なるため、承認用量や添付文書に沿った使用が基本になります。
同じ20単位同士なら同じなのか
別の無作為化二重盲検試験では、incobotulinumtoxinA 20単位とonabotulinumtoxinA 20単位が比較されています。対象は250人の女性で、1か月後の眉間じわ改善について、事前に設定した同等性マージンの範囲内で同等性が確認されました。
この研究は「20単位同士」で比較した点が分かりやすい一方、対象が女性のみです。男性で同じ用量が同じ反応を示すかを直接証明する研究ではありません。
さらに、製剤間の単位は国際単位のような完全共通規格ではありません。そのため、異なる製剤を使う際に「単位数だけを横並び」にして選ぶのは適切ではありません。
300人規模の第III相試験では90%前後が改善
アジアで広く使われる別のA型ボツリヌス毒素製剤とonabotulinumtoxinAを比較した第III相試験では、314人が20単位ずつの2群へ無作為化されました。
4週後の最大収縮時のレスポンダー率は、新規製剤群93.7%、onabotulinumtoxinA群94.5%でした。主要評価項目で非劣性が確認され、重大な有害事象は報告されませんでした。
この試験には男性も含まれていますが、結果は男女別の主要効果を検証する設計ではありません。したがって「男性でも約94%」とそのまま読み替えるべきではありません。
男性は効き始めが遅い可能性がある
男性で特に興味深いのが、効果発現と持続期間を比較した無作為化二重盲検試験です。
20〜60歳の180人を対象に、incobotulinumtoxinA 21単位、onabotulinumtoxinA 21単位、abobotulinumtoxinA 63単位の3群が比較され、180日まで観察されました。
この研究では、3製剤すべてで女性のほうが男性より効果発現が早い傾向が報告されています。女性では平均発現時期がincobotulinumtoxinA約3.0日、onabotulinumtoxinA約5.3日、abobotulinumtoxinA約5.3日でした。
重要なのは、「男性には効かない」という結果ではないことです。男性では筋量や筋活動が大きいことなどが、発現時期の差に関係した可能性があります。
一方、男女差だけを根拠に男性全員へ高用量を投与すべきとも言えません。筋量、しわの深さ、眉位置、左右差、希望する動きの残し方によって調整する必要があります。
男性はなぜ用量が多くなりやすいと言われるのか
男性は平均的に眉間の筋量が大きく、皺眉筋の収縮が強いケースがあります。そのため、同じ表情じわの見た目でも、女性より多い用量が検討されることがあります。
ただし、「男性だから一律に20単位以上」という考え方は単純すぎます。
治療設計では、最大収縮時の眉間じわの深さ、無表情時にも線が残っているか、皺眉筋の筋腹と収縮方向、鼻根筋の収縮、眉毛下制筋の関与、眉位置と上眼瞼の開き、左右差、額の前頭筋への依存、過去の治療歴、前回の効き方と持続期間などを確認する必要があります。
とくに上眼瞼が重い人では、眉を上げる前頭筋の活動に頼って視野を確保している場合があります。眉間だけの治療でも下制筋群のバランスが変化するため、顔全体の筋バランスを見ることが重要です。
効果はいつから分かるのか
ボツリヌストキシンは注射直後に最大効果が出る治療ではありません。多くの臨床試験では数日以内に変化が始まり、2〜4週程度で主要評価が行われています。
患者が「翌日に全く変わらない」と感じても、それだけで無効とは判断できません。一方、早い人では数日で眉間が寄せにくくなったと感じます。
製剤比較研究では発現時期の差が報告されていますが、「製剤Aは必ず3日、製剤Bは必ず5日」と個人へ当てはめることはできません。
持続期間はどのくらいか
眉間のボツリヌストキシン治療では、効果は永久ではありません。臨床試験では3〜4か月前後を中心に追跡されることが多く、180日まで観察した比較試験もあります。
日本のボトックスビスタの用法では3か月以内の再投与を避けるとされています。実際の持続は、用量、筋量、投与位置、代謝、治療歴、評価基準によって変わります。
「動きが完全に戻るまで」を持続期間とするのか、「しわが少し戻り始めるまで」とするのかでも数字は変わります。
有意差と臨床的な違いは分けて考える
ボツリヌストキシンの論文を読むと、統計学的有意差が頻繁に登場します。しかし、統計学的に差があることと、患者が見た目で明確に違いを感じることは同じではありません。
たとえば発現が平均2日早い製剤があったとしても、4週間後の改善率がほぼ同じなら、長期的な満足度にどこまで差が出るかは別問題です。
逆に、4週間後の改善率が同程度でも、効果が切れ始める時期、眉の動きの自然さ、注射時痛、価格などによって満足度は変わります。
「効きすぎ」も治療失敗になり得る
眉間ボトックスは、動きを止めるほど成功という治療ではありません。患者が自然な表情を希望しているのに、眉間周囲の動きが強く制限されれば、不自然に感じることがあります。
また、眉間の筋肉だけでなく額や目周りとのバランスが変わると、眉位置や表情の印象が変化します。男性では「険しい印象だけ弱めたい」「眉の男性らしい形は残したい」という希望もあり、単純な無表情化を目標にしないことが重要です。
主な有害事象
眉間のA型ボツリヌス毒素治療で注意すべき有害事象として、注射部位の疼痛、腫脹、内出血、頭痛、左右差、眉位置の変化、眼瞼下垂などがあります。
特に眼瞼下垂は、薬剤が上眼瞼挙筋周囲へ影響した場合に起こり得ます。PMDA資料でも、眼瞼下垂を減らすために上眼瞼挙筋周囲を避け、皺眉筋への投与位置に注意することが示されています。
多くのRCTでは重篤な有害事象は少ないものの、「重篤な合併症が少ない」ことと「誰にでも安全」は同義ではありません。
眼瞼下垂と眉毛下垂は別
患者が「まぶたが重い」と感じた場合、眼瞼下垂だけでなく眉毛位置の変化も考える必要があります。真の眼瞼下垂は上眼瞼挙筋への影響で上眼瞼が下がる状態です。
一方、眉毛下垂は前頭筋や眉周囲の筋バランスが変わり、眉自体が下がる状態です。治療前に上眼瞼の開き、眉位置、額の代償性収縮を確認することが重要です。
眉間だけ打てばよいとは限らない
眉間じわの主役は皺眉筋と鼻根筋ですが、表情は額・目尻・眉周囲の筋が連動して作られます。眉間だけを弱めると、相対的に前頭筋や眼輪筋の動きが目立つことがあります。
ただし、だからといって額や目尻を毎回セットで打つ必要があるわけではありません。必要な部位だけを治療するほうが、自然な表情を残せることもあります。
静的なしわには限界がある
無表情でも深い溝が残っている場合、ボツリヌストキシンだけで完全に消えないことがあります。筋収縮による折りたたみを減らすことで徐々に目立ちにくくなる可能性はありますが、皮膚に刻まれた線は別の問題です。
レーザー、RF、スキンケア、場合によっては注入治療が検討されることがありますが、眉間へのフィラーは血管塞栓リスクが高い部位であり、安易に同列へ並べるべきではありません。
製剤の単位は単純換算できない
A型ボツリヌス毒素製剤には複数のブランドがあります。onabotulinumtoxinA、incobotulinumtoxinA、abobotulinumtoxinAなどは、同じA型であっても「1単位」の定義が完全に共通ではありません。
RCTで20単位対20単位、20単位対30単位、21単位対63単位といった比較があるのは、製剤ごとの承認用量や試験設計が異なるためです。
したがって、クリニックの料金表を見るときも「50単位で安い」という数字だけでは比較できません。何の製剤か、どの部位に何単位使うのかを確認する必要があります。
国内承認と未承認製剤を区別する
日本で眉間の表情じわに承認されている代表的製剤はボトックスビスタです。一方、美容クリニックでは国内未承認のボツリヌストキシン製剤が使われることもあります。
未承認だから直ちに効果がないという意味ではありません。海外のRCTで有効性や非劣性が示されている製剤もあります。
しかし、日本の薬機法上の承認、安全性情報、救済制度の扱いなどは同じではありません。患者向けには「海外でデータがある」と「日本で承認されている」を分けて説明する必要があります。
抗体による効きにくさはどう考えるか
ボツリヌストキシンを繰り返し使う患者では、中和抗体による二次無反応が話題になることがあります。美容領域の低用量治療では頻度は高くないと考えられていますが、短期間に高用量を繰り返すことは避ける考え方が一般的です。
日本の承認用法でも眉間について3か月以内の再投与を避けることが示されています。「効きが弱くなった=必ず抗体」と考えるのは早計で、用量不足、筋選択、保存・調製、注射位置、前回との評価時期の違いなども考慮します。
初回はどの程度を目標にするか
初回治療では、過去の反応が分からないため、過剰に動きを止めるよりも患者の希望を確認しながら設計することが重要です。特に男性では、仕事上の表情や眉形を残したいケースがあります。
一方、皺眉筋が強く、最大収縮で深い縦じわが出る人では、少なすぎる用量だと満足度が低くなることがあります。「自然さ」と「しっかり効かせる」のどちらを優先するかを事前に共有すると、治療後の認識差を減らせます。
効果判定はいつ行うべきか
注射直後や翌日だけで最終評価はできません。多くのRCTが4週前後を主要評価時点としていることから、臨床でも十分な効果が出るまで一定期間待って評価するのが合理的です。
左右差が早期に見えても、その後の立ち上がりで差が縮まる場合があります。追加投与を急ぐと過量になる可能性があるため、適切な評価時期を設ける必要があります。
研究デザインから見たエビデンスの強さ
眉間じわのボツリヌストキシンは、美容医療の中ではRCTが比較的豊富な領域です。無作為化、二重盲検、実薬対照、プラセボ対照、第III相試験などが複数存在し、短期の有効性は比較的確立しています。
一方、研究の多くは数か月単位であり、10年単位の反復治療をRCTで追跡したデータではありません。また、製薬企業が関与する試験も多く、資金提供や利益相反は個別に確認する必要があります。
研究対象の男女比に注意
美容医療の眉間じわ試験では女性の比率が高い研究が少なくありません。250人の製剤同等性試験は女性のみでした。
一方、314人の第III相比較試験や180人の発現・持続比較試験には男性も含まれています。したがって、男性に有効性がないわけではありませんが、女性中心データから男性の最適用量を精密に決めることはできません。
男性特有の筋量、眉形、皮脂、骨格などを考慮した専用RCTがもっと必要です。
男性で特に見るべきポイント
男性の眉間治療では、しわの深さだけでなく顔全体の印象を確認します。眉頭が下がりやすいタイプでは、下制筋を弱めることで眉がわずかに開く印象になることがあります。
逆に、額の前頭筋まで強く治療すると、眉毛下垂を感じることがあります。男性では平坦または水平寄りの眉形を好む人も多く、女性向けの高いアーチを作る設計が必ずしも適しません。
症例写真を見るときの注意
クリニックの症例写真は参考になりますが、条件をそろえて見る必要があります。表情、照明、カメラ距離、眉を寄せる強さが違うと、効果が大きく見えることがあります。
最大収縮時の治療前後を同条件で比較しているか、無表情時の変化も示されているかを確認するとよいでしょう。
費用比較では製剤名と単位を確認
眉間ボツリヌストキシンの価格は、製剤、単位、診察料、再診・追加調整の扱いで変わります。「眉間1部位」という固定価格でも、何単位まで含まれるかが異なることがあります。
単純に最安値だけで選ぶのではなく、国内承認製剤か、使用単位、医師が診察して設計するか、追加投与の条件などを確認するのが現実的です。
20単位を基準に考えすぎない
RCTでは20単位のonabotulinumtoxinAが多く使われていますが、日本の承認用量は10〜20単位です。したがって、軽度の人に20単位を使わなければ研究通りではない、という意味ではありません。
逆に筋量が大きい男性で20単位でも不足する可能性を議論する海外文献はありますが、日本の承認範囲を超える用量を標準とみなすことも適切ではありません。
眉間ボトックスが向いている人
最大収縮時に眉間の縦じわが強く出る人、険しい印象を弱めたい人、しわが深く固定化する前に筋収縮を抑えたい人は治療候補になります。
一方、無表情時の深い溝だけを完全に消したい人、眼瞼や眉位置に問題があり筋バランスが複雑な人では、期待値調整が重要です。
治療前に医師へ伝えたいこと
過去のボツリヌストキシン治療歴、製剤名、用量、効き始め、ピーク、持続期間、副作用、眼瞼下垂歴があれば伝えると設計に役立ちます。
神経筋疾患、妊娠・授乳、使用薬剤なども安全性評価に関係するため、問診で正確に伝える必要があります。
この論文群から言えること
複数のRCTを総合すると、A型ボツリヌス毒素は中等度〜重度の眉間表情じわを短期的に改善する治療としてエビデンスがあります。
20単位onabotulinumtoxinAを用いた試験では4週前後のレスポンダー率が90%台となる研究が複数あります。
一方、製剤間の差は試験デザインや単位設定によって異なり、「ブランドAが絶対に強い」と単純化することはできません。男性は女性より発現が遅い可能性を示す試験がありますが、男性全員へ高用量を推奨する根拠にはなりません。
研究の限界
第一に、女性主体の研究が多いことです。第二に、主要評価が4週前後の短期改善率に偏っていることです。第三に、Facial Wrinkle Scaleなどの主観的尺度が多く、客観的な筋活動や3D解析を使った研究は限られます。
第四に、製剤ごとの単位が同一ではないため、単純な用量比較が難しいことです。第五に、企業支援研究が多い領域であり、利益相反の確認が必要です。
2025年の3D解析RCTが示す今後の方向性
2025年には143人の女性を4群へ無作為化し、onabotulinumtoxinA、abobotulinumtoxinA、prabotulinumtoxinA、incobotulinumtoxinAを動的3Dフォトグラメトリーで比較したRCTも報告されています。
従来の目視スケールだけではなく、眉間のstrainを定量化した点が特徴です。ただし、この研究も女性のみです。男性の顔面筋活動を同じ客観指標で比較する研究が今後必要です。
臨床で重要なのは「製剤ランキング」より設計
患者が最も知りたいのは「どのボトックスが最強か」かもしれません。しかし、研究を読むと、製剤名だけで結果が決まるわけではないことが分かります。
適切な患者選択、筋解剖の理解、用量、注射位置、左右差、眉と額のバランス、希望する自然さの確認が結果に大きく関係します。同じ製剤でも設計が違えば、見た目の満足度は変わります。
よくある疑問:男性は20単位より多く必要ですか
男性では筋量が多い傾向があり、海外では高用量を検討した研究もあります。しかし、日本で承認されているボトックスビスタの眉間用量は通常10〜20単位です。海外の高用量データがあることと、日本で高用量を標準的に使うことは別です。
また、同じ男性でも、眉間を強く寄せても浅いしわしか出ない人と、皺眉筋が太く深い溝ができる人では必要な設計が異なります。性別だけで用量を決めるのではなく、実際の筋活動と希望する表情の残し方を評価するほうが合理的です。
よくある疑問:韓国製などは効きませんか
国内未承認製剤でも、海外でRCTが行われ、onabotulinumtoxinAに対する非劣性が示された製剤があります。したがって「未承認=科学的根拠ゼロ」という説明は正確ではありません。
一方、日本での承認審査、品質管理情報、公的な添付文書、医薬品副作用被害救済制度との関係は国内承認製剤と同じではありません。価格差だけでなく、承認状況と製剤名を確認したうえで選ぶ必要があります。
よくある疑問:しわが戻る前に打ったほうがよいですか
効果が完全に切れる前に次回治療を希望する人もいますが、日本のボトックスビスタでは3か月以内の再投与を避けることが示されています。
必要以上に短い間隔で投与を繰り返すことには、過剰な筋力低下や抗体形成などを考慮する必要があります。個人の持続期間を記録し、承認用法と医師の評価に基づいて次回時期を決めるのが基本です。
よくある疑問:初回で左右差が出たら失敗ですか
顔の筋活動には治療前から左右差があります。注射後に左右の立ち上がり速度が違う場合もあり、早すぎる時点で左右差を最終評価するのは適切ではありません。
十分な効果発現を待った後も明らかな左右差が残る場合、追加調整が検討されることがあります。ただし、追加投与を繰り返すほどよいわけではなく、元の眉位置や前頭筋の代償を含めて判断する必要があります。
よくある疑問:眉間ボトックスで目が開きやすくなりますか
眉間の下制筋群を弱めることで、眉頭周囲の下向きの力が減り、結果として目元がやや開いたように見える人はいます。しかし、眼瞼下垂そのものを治療する目的の薬ではありません。
逆に、不適切な位置への投与や周囲への拡散で眼瞼下垂が起こる可能性があります。「目を大きくする注射」と単純化するのは避けるべきです。
よくある疑問:眉間のしわ予防として若いうちから打つ意味はありますか
表情筋による折りたたみを減らせば、動的なしわが深く刻まれる機会を減らせるという理屈はあります。しかし、若年者へ予防目的で長期反復投与した場合の利益を、数十年単位のRCTで証明したデータはありません。
「予防になる可能性」と「将来のしわを確実に防げる」は別です。現時点のしわや表情の悩みが小さい人に、将来不安だけを理由に治療を強く勧める根拠は十分ではありません。
受診先を比較するときのチェックポイント
眉間ボツリヌストキシンは短時間で行える治療ですが、注射そのものより診断と設計が重要です。
価格を見るときは、製剤名が明示されているか、国内承認製剤か、眉間1部位に含まれる単位が明確か、医師が表情筋を確認してから注射するか、治療後の診察や左右差への対応条件が説明されているかを確認するとよいでしょう。
特に「何単位でも同額」「強力な製剤」「永久に効く」など、医学的に単純化しすぎた表現には注意が必要です。単位数が多いほど良いわけでも、動かなくなるほど成功というわけでもありません。
このテーマで最も重要なポイント
眉間のボツリヌストキシン治療は、短期の有効性については比較的エビデンスが豊富です。一方で、男性の最適用量、製剤間の微妙な差、長期反復による10年以上の影響など、未解決の点も残っています。
RCTの数字を使うときは、対象が男性をどの程度含むか、用量、製剤、評価尺度、評価時点を確認する必要があります。広告で見かける「改善率90%以上」という数字だけを切り取ると、実際の患者が期待する「自然に見えるか」「何か月満足できるか」「自分の眉形に合うか」という臨床的な問いを見失います。
男性が眉間治療を選ぶ場合も、性別だけで一律に強く打つのではなく、筋量、骨格、眉位置、眼瞼の状態、希望する表情を含めて個別に設計することが、研究データを現実の治療へ落とし込むうえで最も重要です。
まとめ
眉間の表情じわに対するA型ボツリヌス毒素は、複数のRCTで有効性が支持されています。20単位onabotulinumtoxinAを用いた比較試験では、4週前後で90%台のレスポンダー率が報告されています。
ただし、その数字は中等度〜重度のしわを対象に、研究で定めた評価尺度を使った結果です。すべての患者が「しわゼロ」になる割合ではありません。
製剤間では同等性や非劣性を示すRCTがありますが、製剤ごとの単位は完全共通ではなく、単位数だけで強さを比較するべきではありません。
男性では女性より効果発現が遅い可能性を示す試験があります。これは男性で無効という意味ではなく、筋量などの違いを踏まえた個別設計が重要という示唆です。
日本ではボトックスビスタが65歳未満の成人の眉間・目尻の表情じわに承認され、眉間は通常10〜20単位、3か月以内の再投与を避ける用法が示されています。
治療を検討するときは、価格だけでなく、製剤名、国内承認の有無、使用単位、医師の診察、眼瞼・眉位置を含む筋バランスの評価、治療後のフォロー体制まで確認することが大切です。
参考にした主な研究・公的資料
- Kane MACら。20単位onabotulinumtoxinAと30単位incobotulinumtoxinAを比較した多施設無作為化二重盲検試験。2012年。
- Sattler Gら。incobotulinumtoxinAとonabotulinumtoxinAの効果発現・持続を180日比較した無作為化二重盲検試験。2013年。
- Won CHら。新規A型ボツリヌス毒素とonabotulinumtoxinAを比較した314人の第III相無作為化二重盲検試験。2013年。
- Carruthersら。incobotulinumtoxinA 20単位とプラセボを比較した271人の第III相無作為化二重盲検試験。
- Lemdani MSら。4種類のA型ボツリヌス毒素を動的3Dフォトグラメトリーで比較した143人の無作為化二重盲検試験。JAMA Dermatology、2025年。
- PMDA ボトックスビスタ注用50単位 再審査報告書・添付文書関連資料。